日本代表が勝ち抜くためのポイントは? ラグビーW杯の対戦相手が決定

斉藤健仁

世界屈指のハーフ団が試合をコントロール

アイルランド代表の司令塔、ジョナサン・セクストン 【写真:ロイター/アフロ】

 アイルランドを指揮するのはクラブレベルでマンスター(アイルランド)を欧州王者に2度導き、シックス・ネーションズも2連覇したニュージーランド(NZ)出身のジョー・シュミット。そしてスコットランドを変革したのは、クラブレベルにおいて欧州カップ戦でクレルモン(フランス)に準優勝をもたらしたNZ出身のヴァーン・コッターだった。ただコッターHCは退任し、6月からスコットランド出身のグレガー・タウンゼントが就任する。

 いずれにせよ、アイルランド、スコットランドともに日本と同じくNZ出身のヘッドコーチが、従来のFWを軸とした戦いに、ボールを展開するラグビーもプラスすることで、世界ランキングを上げてきた。その両チームのアタックを、日本代表は激しく前に出るディフェンスでどこまで止められるか。ジョセフHCは「ディフェンスは課題。(欧州のチームは)特にセットプレーからサイズ、パワーを生かしてアタックしてくるので、2年間でそのあたりのDFをやっていきたい」と先を見据えた。

 またアイルランドにはSHコナー・マレーとSOジョナサン・セクストン、スコットランドにはSHグレイグ・レイドローとSOフィン・ラッセルといった世界屈指のハーフ団がいる。ゲームをコントールする選手を自由にさせてしまうとペースを握られるため、しっかりとプレッシャーをかけたい。日本代表の元主将・リーチ マイケルを筆頭に布巻峻介、徳永祥尭、今後、代表資格を得るヴィリー・ブリッツらFW第3列の活躍が欠かせない。

 どの試合も負けられない戦いとなるため、一気に陣地が回復できる、15年W杯の日本代表の時のFB五郎丸歩のようなロングキッカーもほしいところ。ヤマハ発動機のFBゲラード・ファンデンヒーファーのような選手がいれば心強いのだが……。もちろん、勝利のためには日本代表のプレースキッカーがしっかりとPGやゴールを決めることも必須だ。

スクラム、ラインアウトの強化は不可欠

日本代表、サンウルブズのスクラムを指導する長谷川慎コーチ 【写真:アフロ】

 セットプレーに強みを持つ欧州3チーム、体の大きなアイランダーのチームと対戦するときはセットプレーで劣勢になるとやはり試合は難しくなる。
「15年のW杯、日本代表のスクラムが安定していたのが大きな強みになった。(マルク・)ダルマゾコーチがしっかりジャパンのスクラムを構築し、14年の終盤から15年にかけて成長した。我々にとっても今後のチャレンジは同じ」(ジョセフHC)

 元日本代表PRでヤマハ発動機のスクラムを強くした長谷川慎コーチが、日本代表だけでなくサンウルブズも指導し、ジョセフHCは「昨年11月からだいぶ成長した」と満足げ。またラインアウトからのモールDFに関しては「そのエリアは私の担当。私の仕事です」とキッパリと言い、「セットプレーには特効薬はない。このまま努力しないといけない。これからも強化し続けることが大事」と続けた。

W杯に出場する選手を見極める段階に

スコットランド代表の精神的支柱でもあるSHグレイグ・レイドロー 【写真:ロイター/アフロ】

 個々のチームとの対戦を考えると、ルーマニアはエディー・ジャパン時代にアウェーで2度対戦して2勝している。フランスなどでプレーしている選手が多いFW陣を軸に、特にスクラム、モールで圧力をかけてくるが、それに耐えることができれば、ほかのエリアでは日本代表の方が優勢だ。

 11年W杯で対戦したように、トンガはW杯では違ったチームになってくるが、サンウルブズなどで南アフリカ勢との経験豊富な選手が多い日本代表にとっては、もう、その圧力に簡単に屈することはないはずだ。アタックでトライを取り切り、セットプレー、DFで我慢すれば勝機はある。サモアが来た場合は、15年W杯と同じように、ハーフ団のキックで相手を背走させるシーンを増やしてペースを握りたい。

 スコットランドは、普通にボールを回している攻撃はさほど脅威ではないが、モールやラインアウトを起点としたアタックは強力。SHレイドローのキックも正確だ。15年W杯の時は南アフリカ戦の後、日本代表は中3日で戦ったが、19年はコンディションを整えることさえできれば、接戦に持ち込むことができるはず。またグラスゴー・ウォーリアーズ(スコットランド)で実績を出した新指揮官の手腕も問われるはずだ。

 プールA最大の難関はもちろんアイルランドだ。6月にも国内で日本代表と2試合戦うアイルランドはアタックの決定力もあり、DFも固く、セットプレーも安定しており、なかなか隙が見当たらないチームである。日本代表にとって、アイルランドよりどこか一つでも二つでも上回ることができる要素やエリアがあれば、勝機を見出すことができるか。

 日本代表にとってうまく戦わないと1勝3敗もありえるが、4勝を目指しつつ、やはり3勝1敗として2位でプール通過を目指すのが現実的だ。そのためには「経験値の高い選手はあと2年間、戦い続けることができるか、そして若手はこのレベルで戦えるか見極めてから、構想を固めていきたい」と指揮官が言うように、今年が終われば、軸となる選手もある程度固定して戦うことになろう。
 ジョセフHCは15年W杯経験者、そしてサンウルブズで伸びている選手、そして若手にチャンスを与えつつ、W杯で勝てるチームを目指して邁進(まいしん)していく。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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