日本ラグビー界の「野獣」となるか? 身長197cm、宇佐美和彦にかかる期待

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エディー前HC「相手を痛めつけろ!」

日本代表として韓国代表戦でボールを追う宇佐美。2019年W杯での活躍が期待されている 【写真:アフロスポーツ】

 身長197センチ、体重117キロ。堂々たる体格の宇佐美和彦(24歳)はかつて、エディー・ジョーンズ前日本代表HC(ヘッドコーチ)に激しい口調で指摘されていた。

「ウサミ! 優しすぎる。グラウンドでは相手を痛めつけろ! 野獣になるんだ!」

 格闘技の要素を持つラグビーでは、闘争心を持つことも重要な要素のひとつである。特に、宇佐美がプレーするLO(ロック)は強く、タフな男が評価されるポジション。ジョーンズ前HCは、もっと激しく戦ってほしいと願っていたのだ。

 その話を思い出しながら、宇佐美は柔和な表情で語り出す。「野獣、というのはなかなか難しいです。一生懸命プレーはしていますが、相手を痛めつけるというのは性格的に……」

「赤井さんがいなければ僕は今の位置にいない」

立命館大時代に鍛えられた経験が、日本代表入りにつながった 【築田純】

 部員が15人そろわないこともあった西条高(愛媛)でラグビーを始め、立命館大時代には早くも日本代表合宿に呼ばれた。「身長のおかげで代表に呼んでもらえましたが、技術も体力も全然違いました。全然、届かなかったです」

 197センチの体は長所ではあるが、大きい分、思い通りに動かす難しさも増す。走って、当たり、倒れ、立ち上がることを繰り返すラグビーでは、大きな体はそれだけ負担にもなっていた。

 そんな宇佐美を鍛えたのが立命館大の赤井大介コーチだった。関東学院大、三洋電機(現パナソニック)などで活躍し、海外でもプレーした赤井コーチとのマンツーマンの練習が、宇佐美を変えた。「赤井さんに体の使い方を教えていただいたのが大きかったです。すごく影響を受けましたし、赤井さんがいなければ僕は今の位置にいないと思います」

 赤井コーチの指導を受け、宇佐美は低いタックルを正確に、何度も繰り返して決められるようになった。そして、トップリーグで強化を進めるキヤノンから声をかけられ、入社が決まる。

身長208cmのベッカーと戦って得たもの

日本代表のキャップ授与式。松井千士(左/183cm)、渡邉隆之(左から2人目/180cm)、村田毅(右/185cm)と比べても宇佐美の背の高さは目立つ 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 多くの外国人選手が所属するトップリーグでの「初めての経験」も、宇佐美の変化につながっている。

 神戸製鋼のアンドリース・ベッカー(元南アフリカ代表)は208センチ、121キロと圧倒的なサイズを誇る。15年1月11日、キヤノンvs.神戸製鋼で初めて対戦した宇佐美は「やっぱり大きかったです。あんなに他人を見上げることは今までありませんでした」と報道陣を相手に無邪気な笑顔を見せた。

 しかし、その後の言葉を紡ぐ際は、笑顔が消えていた。
「ベッカーは自信に溢れていました。ラインアウトでは『俺のところに投げてこい!』と自信を持ってサインを出すし、ボールを持って、ぶつかってからレッグドライブするところでも自信を感じました。こちらを威嚇してくるような……」

 自身に足りない点、ジョーンズ前HCに指摘されていた点について、ベッカーの姿にヒントを見つけた。「(日本代表の)大野均さんもそうですが、ベッカーもスイッチの入れ方がうまいんだと思います。普段の性格はなかなか変えられませんが、グラウンドに入ったらスイッチを入れられるようにできれば……」

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