シンクロ井村コーチも苦労する小型化 メダルの色を変える“手のひら”分の差
「選手は高さを勘違いしている」
井村コーチは選手たちに「10センチ、15センチ」の意識改革を求める 【写真:アフロスポーツ】
「体の立ち泳ぎとか、手の動作においては、15センチぐらい。全然ランクが違う。足に関しては10センチぐらい。そこを克服しないと、私達の体型でメダルを取ってもう一つ(先に)いこうか、って言った時に、無理ですって。そこがやっぱり日本選手の課題ですから。それを克服しないと」
15センチと言えば手のひらの長さにも満たないが、その分の体が水上に出ているか否かは、世界トップのシンクロにおいては大きな違いになる。
加えて、明確な泳ぎを目指していく意向を示した。
「隊形の明確さ、クリアさ。新しい選手が入ったから、自分の場所を確実に守れない。それは技術の未熟さからくる」
明確になった課題を克服するため井村コーチは、上体の体積・存在感を増すためのトレーニングを積んでいくと語った。3月に行ったヨーロッパ遠征では経験の少ない新チームに試合の場数を踏ませてきたが、これからは合宿で鍛えていくという。
また、リオ五輪と同じ曲で泳ぐチームのTR・FRは、井村コーチの目には「いやまだまだ。(目指す演技の出来栄えの)30%、40%。そんな世界です」と映ったという。
「あくまでもリオの時の(演技という)目指すものが一つあって、それを超えなければいけないです。切れ味とかスピード感とか、見本があるので、まずそこまでいかせることが先ですよね。積み立ててそこへいかすというよりも、あの子達の意識がまったく違うので。
それを分かれば、ある時ボーンって上がると思うんですよ。徐々に徐々に、という問題じゃないんですよね。高さについては(基準が)『これなんだ』って分かればそこにくると思うんです。これからそういう伸び方をするんじゃないかなって。そういう伸び方ができる課題だと思っています」
メダル常連国の格付けを死守できるか
「3年後にまさにこの場所で五輪が行われるんだから、(リオと)同じメダルではすまない。少なくとも一つは銀メダル以上のものを取らなければ、日本のシンクロをやってきた甲斐がない。みんながそれに向かって一丸となってほしい」
シンクロ関係者の熱いエール、体格差のハンディを背負ってチームを指揮する井村コーチの思いを、選手はよく分かっている。リオ五輪にも出場し、今ではチームのまとめ役としても活躍する丸茂圭衣(井村シンクロクラブ)は、世界選手権、さらに東京五輪を見据えた決意を問われてこう答えている。
「リオ五輪でもそうなんですけど、その前の世界水泳(2015年カザン大会)でもメダルを取らせてもらって、日本はメダルを取れる国だ、という認識になってきているので、それを絶対に手放してはいけない。世界水泳ではメダルはもちろん、昨年よりもいい色のメダルを目指してやっていきたいと思います」
2カ月半後、ブダペストで、マーメイドジャパンは東京五輪の表彰台へ向けて発進する。