シンクロ井村コーチも苦労する小型化 メダルの色を変える“手のひら”分の差

沢田聡子
 シンクロナイズドスイミングのジャパンオープンが4月28〜30日、東京辰巳国際水泳場で世界水泳選手権(7月、ハンガリー・ブダペスト)の壮行試合として行われた。チーム種目には世界選手権でライバルとなる強豪国は出場しておらず、日本は184.7684点で順当に優勝。ただこの大会は順位ではなく、リオ五輪後に新メンバーも加わった日本チームの演技内容が注目された。

今夏に決まる東京五輪までの「格付け」

リオ五輪と同じルーティンで臨んだ井村ジャパン。精度をさらに高め、表彰台の座を確かなものにする狙いだ 【写真:アフロスポーツ】

 昨夏のリオデジャネイロ五輪でシンクロ日本代表は、2004年アテネ五輪を最後に遠ざかっていたチーム種目の表彰台に12年ぶりに戻った。次なる目標は、20年東京五輪でリオの銅よりもいい色のメダルを獲得することにある。

 一部の選手が入れ替わり新日本代表として臨む7月の世界選手権は、東京五輪に向け、世界各国の「格付け」が決まる重要な大会となる。五輪後に行われる各国の選手・コーチ入れ替えを経て、最初の世界選手権の結果で次の4年間の勢力図がおおよそ決まってしまうのだ。言い換えれば、今夏の世界選手権でメダルを取れば、東京五輪の表彰台への道が開けることになる。

 五輪後はルーティンを変え新しいイメージをアピールする戦略もあるが、世界選手権壮行試合として行われたジャパンオープンに日本チームはテクニカルルーティン(以下TR)、フリールーティン(以下FR)共にリオ五輪と同じ曲で臨んだ。五輪で銅メダルの評価を得たルーティンの精度を上げ、表彰台常連国としての評価を確実にする作戦だ。

 リオ五輪にも出場した中村麻衣(井村シンクロクラブ)は、「特に五輪を経験したメンバーはそのいい流れも知っていますし、試合での緊張感も経験しているので、去年の五輪よりいい演技を目指している。その感覚を忘れないように、下の人に伝えていけるようにしています」と語っている。

「リオでもすごく言われ続けていたのはスピード感、演技の切れ。五輪からもずっと指導して頂いていたので、今後もっとそれを気をつけて練習していきたいと思います」(中村)

素人目にも小柄な日本代表

大型化が進む世界のシンクロ界。小柄な日本代表は体格面の差を技術で克服しなければならない 【写真:アフロスポーツ】

 ただ、新メンバーも多い日本の泳ぎはリオ五輪でようやくたどり着いた「95点の壁」にまだ達しておらず、結果としてはTRは91.5684点、FRは93.2000点で、リオ五輪よりもそれぞれ2.2点ほど低い評価となった。井村雅代ヘッドコーチが課題に挙げたのは「高さ」だ。大型化が進む世界の中で、日本はもとより小柄な体での闘いを強いられてきたが、リオ五輪後には三井梨紗子(168センチ)、吉田胡桃(167センチ)、箱山愛香(176センチ)ら大型選手が代表を離れ、体格面での差はさらに広がった。

 新チームの体の小ささは素人目にも明らかで、銅メダルからもう一ついい色のメダルを目指す闘いに臨むにあたり、現状は名伯楽・井村コーチにとっても厳しいものだろう。東京五輪に向けては代表選考の方法にも一考が必要かもしれないが、井村コーチは今夏の世界選手権でとにかく結果を出そうとしている。「まず一つは、体作りの部分では、体が小さすぎます。ともかくもうちょっと存在感の大きな体にしたいと思います。二カ月半でどこまでいけるかは分かりませんけど、時間的には“足らなめ”ですけど、ともかくやります」。

「それと、絶対にしなければいけないことは、高さを上げること。足の高さもですけれども、あの子たちの甘いのは、上体の体積。水面上の体積が少なすぎます」

 いいルーティンを泳いでも、体の水上に出ている部分が少ないと、演技に説得力が出ない。井村コーチが挙げた二番目の課題「上体の体積」は、真っ先に挙げた課題である体の小ささと切っても切り離せない事柄だが、日本チームは鍛錬でその課題を克服しなくてはならない。

 チームFRを泳ぎ終えた選手たちが口にしたのは、水着を生かせていないという井村コーチからの指摘だった。「リオの時の水着というのは、ものすごく発色のいい水着を作って、高さを出したら本当に存在感があるような水着を作ったんです。なのに、何を着てても一緒なのかな」(井村コーチ)

 要するに、今の日本は存在感を出せるだけの高さに達していないということだ。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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