「戦いを欲しがれ」苦境続くアイホ男子 鈴木監督から新チームへのメッセージ

沢田聡子

代表もクラブチームも成績低下

今年1月から男子代表を率いる鈴木貴人監督。日本男子アイスホッケー界にとって、アイコンとも言える存在だ 【スポーツナビ】

 アイスホッケー男子の世界選手権(ディビジョンI グループB)が4月23日より北アイルランド・ベルファストで行われる。すでに平昌出場を逃している日本にとっては、2022年北京冬季五輪に向けスタートを切る大会だ。

 男子代表は09年以来昨季までグループA(2部相当)に参戦し続けてきた(11年は東日本大震災の影響で派遣中止)。しかし昨年は5戦全敗という結果に終わり、グループBに降格。かつて、極東枠が設けられていた1998〜2004年までは1部に属していたこともある男子代表だが、クラブチームを見ても近年は成績が大きく落ち込んでいる。今季のアジアリーグでは昨季に続き日本の4チームがいずれもファイナルに進めなかった。

 セミファイナルで敗退した栃木日光アイスバックスのGKであり、長年日本代表のゴールも守ってきた福藤豊は「(以前は格下だった)韓国を見ても、代表でもしっかり結果を出しているし、若い選手もどんどん育ってきている。日本のホッケーのレベルを上げるためには、選手だけではなく関係者の皆がしっかりとした目標、ビジョンを立てて前に進んでいかなくてはいけない」と危機感をあらわにした。

「私達が感じている危機感を選手も感じてしまっているということが現実」

 現状を厳しく認識するのは、グレッグ・トムソン前監督の辞任に伴い今年1月より日本代表コーチから監督に昇格した鈴木貴人監督も同じだ。苦境の打開へ向け、現役時代は五輪出場こそ果たせなかったものの、主将として代表を長らく牽引してきた鈴木新監督にファンが寄せる期待は大きい。

「相手の強さは体感しないと分からない」

 鈴木氏は、東洋大学の監督に就任し指導者となってからも「男子の日本代表が五輪に行くことが自分のひとつの大きな夢、目標」と語っていた。代表監督となった今も「男子代表の次の大きな目標として、22年北京五輪出場がある」と言い切る。

 ただ、五輪への道が険しいことを誰よりも知っているのもまた鈴木監督だ。

 監督の目に現在の代表チームは「スピード、スキル面では海外勢にも引けを取らないものを多く持っているが、プレッシャーのある国際試合であまり発揮できていない」と映っている。打開のカギとして挙げたのが“経験”だ。北米リーグでプレーした経歴を持つ鈴木監督は、経験がなければ持っているスキルやスピードを生かせないと考える。「体感しないと、相手の強さやリーチ、スピード、組織力などは分からない」

 レベルの高い試合を数多くこなすことが、代表の成功にもっとも必要だと考える監督。平昌五輪最終予選の代表に選出され、今夏からNCAA・D1(全米大学体育協会1部)に属するレイク・スーペリア州立大学に進学する三浦優希ら、若い世代からは海外でチャレンジする選手も出てきているが、さらなる“海外組”の出現を願っている。

 加えて、多くの代表選手が所属するアジアリーグでも「日本のチームがトップであり続けなくてはいけない」と言う。

「連盟としても日本の4チームがどれだけ力を発揮できるか強化を考えなくてはいけないし、リーグ(そのもの)の強化も考えていかなくてはいけない。そこにプラスして国際試合を多く組めるようにしたい」

 足元のリーグでのレベルアップなくして、代表の強化も進まない。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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