走高跳・戸邉、東京へ向けた新たな挑戦 海外での経験を糧に勝ちに行くシーズンへ
記録だけでなく「優勝という結果も求めたい」
2m30台を4度跳んだ14年は優勝がなかった。今年は結果も求めながら、日本記録にも挑戦していくつもりだ 【写真:アフロスポーツ】
「実際に今年のロンドン世界選手権の参加標準記録にもなっている2m30は、世界でも評価されるラインなんです。その記録を持っていればダイヤモンドリーグにも出られるし、世界のトップの仲間入りもできる。でも、リオ五輪を見て感じたのは、入賞ということを考えれば予選から2m30以上を跳ばなければいけないし、決勝では2m35くらいを跳ばなければいけません。しかも予選から決勝は中1日だから、2m30をやっと越えられたくらいの選手は、決勝では絶対に調子を上げられない。ですから2m30というのは跳んで当然で、失敗しても跳べる高さにしなければいけないということをすごく感じました」
リオ五輪へ向けては、最初の2年間は全体的なレベルアップを図り、残りの2年間で技術に磨きをかけていけばいいと考えていたと言う。それまでの新しい技術の習得も、大体1年くらいで自分のものになっていたからだ。だが2020年の東京五輪へ向けては、体作りをやりながら、技術も高めていかなければ間に合わないと考えるようになった。
「そういう中でも今年は2m33の日本記録までは行きたいと思っていますね。ただ2m31の2回を含めて、2m30台を4回跳んだ14年は、周りからはすごく評価されたのですが、一度も勝っていなかったので、自分の中では『これではダメだぞ』と思っていたんです。その点では優勝という結果も求めたい。だからまずはシーズン初戦までに、技術的には仕上がり切って無い状態でも2m30に挑戦して、場合によっては跳べるくらいにしたいし、今年は2m30をどのくらいの確率で跳べるようになるかをテーマにします。昨年まで目標にしていた2m40は頭の中から消して、それができた先の目標としてとっておこうと思っています」
世界の試合を経験できたことが財産
世界の大会を転戦することで、試合を有利に進める周りとの関係を築けることは大事な経験だ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
だが戸邉は世界を経験しているという財産もある。
「走高跳のトレーニング自体は1カ月ほどスウェーデンに行き、2004年アテネ五輪金メダリストのステファン・ホルム選手の本拠地で練習した時に学びましたが、安藤財団の支援を受けていた1年半は試合がメインでした。ダイヤモンドリーグなどで世界のトップ選手と一緒に試合をする経験は僕の中ではすごく大きいもので、技術的なことはもちろん、他の選手は体力がどのぐらいあるのかとか、どういうタイプの選手かということまで分かりました。それに自分が跳ぶまでの時間をどのように過ごしているかなど、間近で見なければ分からないことはたくさんあります。スタートしてゴールするまでのトラック競技と違って、フィールド競技は時間が長いので、トップ選手と顔見知りになっておくことが試合を有利に進められる条件の一つ。助走合わせの順番でも『今度はあいつが行くから』と割り込まれることが無くなるなど、助けてくれることも多くなりました。出場した9人全員が2m30以上を跳ぶという世界選手権や五輪でも無いような試合を経験できたことは貴重なことでした」
こう話す戸邉が予定しているシーズン初戦は5月3日の静岡国際陸上だが、オファーを出している5月5日のダイアモンドリーグ・ドーハ大会の出場が決まればそちらにスライドする予定だ。
3年後に迫った東京五輪へ向けた第一歩が始まる。