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走高跳・戸邉、東京へ向けた新たな挑戦
海外での経験を糧に勝ちに行くシーズンへ

室内自己ベストタイで上々のシーズンイン

上々のシーズンインを迎えている戸邉直人(写真は昨年の日本選手権)
上々のシーズンインを迎えている戸邉直人(写真は昨年の日本選手権)【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

「安藤財団グローバルチャレンジプロジェクト(グロチャレ)」の支援を今年3月まで受けていた走高跳の戸邉直人(つくばツインピークス)。今年はその支援で1月から2月半ばまでエストニアを拠点にして、4試合に出場した。


「『チェコ・ジャンピングツアー』の中の一つで、ショッピングモールの中でやる試合に出たり、昨年から始まったIAAF(国際陸上競技連盟)のインドアツアーに4試合中2試合に出場して、優勝はありませんでしたが2位と4位に入って、ツアーランキングでは2位になりました。記録は一番良かったのが2m26でしたが、これは屋外で2m30台を4回跳んだ14年に出した室内自己ベストタイだったので、準備としてはまあまあかなと思います」

リオに向けた残り2年はケガに悩まされた

昨年は左ふくらはぎ痛に悩まされ、日本選手権では6位。リオ五輪出場はかなわなかった
昨年は左ふくらはぎ痛に悩まされ、日本選手権では6位。リオ五輪出場はかなわなかった【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 昨年は4月上旬に左ふくらはぎを痛め、6月の日本選手権(愛知・名古屋)では2m20で6位。15年5月のダイヤモンドリーグ上海大会で2m29の参加標準記録を突破していたためチャンスは残されていたが、ラストチャンスとなった大阪選手権でも結果を出せず(2m17で3位)、自身初の五輪代表には届かなかった。


「五輪サイクルで考えるとリオまでの4年間は、13年と14年はケガもなく好調で記録もどんどん上がっていました。ですが、後半の15年と16年はケガも続いてパフォーマンスも落ちてしまったので……。ですから、ケガをしないで4年間トレーニングを続けることの大事さを、身をもって知りました」


 ケガの要因にはいろいろあるが、基本的にトレーニングをし過ぎたということがあると戸邉は言う。高い負荷をかけるようになると、どんどんケガのリスクは高まると。


「やるべきことを一つ一つやっていって記録も伸び、2m30を越えてからは世界に出るようにもなりました。ダイヤモンドリーグに出るようになってからは自分の中での世界が開けたと思います。何試合か出ていると自分がそこにいるのが当たり前のようになり、ムタズ・エサ・バルシム(カタール/自己ベスト・2m43)に勝ちたいとか、ボーダン・ボンダレンコ(ウクライナ/自己ベスト・2m42)に勝ちたいと思うようになりました。そのためにはシャカリキに頑張らなくてはいけないので、自分の現状の体力や技術に対してトレーニングをし過ぎたなというのはあります。昨年ケガをしたのも、シーズンへ向けて仕上げていかなければいけないと跳躍練習の頻度を上げていた時だったので、体にかかる負荷も高くなっていて、週に何度も跳躍練習をしてしまった疲労が、脚にはかなり溜まっていたのだと思います」

ケガのリスク回避のため練習計画や技術を変更

 走高跳は陸上競技の種目の中でも、高い負荷がかかる一つだ。


 他の競技は水平に移動するために効率よく動けば負荷が減り、ケガはバランスの崩れた動きをした時の方が多い。だが走高跳は水平移動してきたものを垂直方向の動きに変換させる種目で、その瞬間の衝撃は1tくらいになるという。踏み切りがキッチリはまった時の方が負荷が大きくなるため、調子が良くて気持ちよくやっている時の方がケガをすることが多い。


 例えば昨年、好調を維持していてリオの優勝候補と目されていたイタリアのジャンマルコ・タンベリが、モナコのダイヤモンドリーグで2m39を跳んで優勝を決めた。しかしその後、2m41に挑戦した際にケガをしてしまい、今もリハビリを続けている。


「トレーニングを続けている中で体力的には上がってきていますが、頑張ろうという思いもあって、強度が高いものをどんどん入れてしまいました。内容としてケガのリスクが高いことをずっとやり続けていたことが問題だったのだと思います。だから今年は、ケガをしないようにするトレーニングを継続していくことは当然ですが、計画の段階で何をするかというのを考えた上で、しっかり時間を取って、より良いトレーニングを計画的に実践しようという取り組みをしています」


 ケガのリスクを回避するために、技術的な変化も加えている。


「僕はどちらかというと助走を直線的に入る方だったのですが、それだとふくらはぎやアキレス腱に大きな負荷がかかってしまいケガをしやすいので、助走のカーブを大きくして体を傾けながら踏み切りに入る技術に取り組んでいます。それだとひざが曲がることでふくらはぎで受け止めていた力を、ひざを曲げなくなるために股関節周りの大きな筋肉で受け止めることができるので、効率的に体も上がるし、ケガの防止にもなると考えています」

折山淑美

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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