諦めないから“野球の神”が見捨てないーー春の東京を制した早実・清宮幸太郎の檄
どんな点差でも諦めないチームカラー
春季都大会で2打席連続本塁打を放ち、早稲田実を35年ぶり優勝に導いた清宮。高校通算本塁打を84本まで伸ばした 【写真は共同】
ここであらためて記す――「諦めない」という言葉を。付け加えれば「動じない」という言葉も。清宮幸太郎キャプテンの率いる早稲田実のキーワードだ。
都大会準決勝の国士舘戦、初回にいきなり5点を先制される。ややもすれば、気勢を削がれてもおかしくない。だが、主将の清宮幸太郎は「諦めず1点でも返していこう」とナインに声をかけたという。和泉実監督も「このチームはキャプテンを中心にどんな点差になろうとも諦めない。そのカラーが全員に染みついてる」と言う。結果、8回の1イニングで10点を取り、16対8の8回コールド勝ちを収めた。
「もうダメかなと思った」9回裏に――
「もう、だめかな、ヤバいかなと思いましたよ。さすがに」
ゲーム後の囲み取材で実は清宮は笑ったが、雪山幹太のタイムリー、自らの同点3ランで追いついて、延長12回で逆転勝ちした。
思えば、センバツ1回戦の明徳義塾戦。9回2死、清宮の前の2番打者・横山優斗のピッチャーゴロを相手投手がエラー。これをきっかけに同点に追いついて、最後は延長で逆転した。「早実には野球の神様がついとる」と明徳義塾の馬淵史郎監督に言わしめた。いや、どうだろう。神様が勝たせてくれるのではなく、“諦めない”から“野球の神様”が見捨てないのだ。
課題の勝負所で出た同点3ラン
11対10と1点リードの8回裏、清宮は2ランを放つ。2ボールから外角のストレートをファウルした後の4球目、「ストレートを狙っていて仕留められた」。3球目より少し甘く中に入ったボールだった。
そして、前述の9回裏。1点を返し、なおも走者を2人置いて3ランなら同点という場面を迎える。
「4打席目にスライダーで空振り三振に打ち取られていたので、スライダーを狙っていた。ああいう勝負所で打つことを課題にやっていたので、成果が出た」
「思わず、ガッツポーズが出ちゃいました」という打球はセンターバックスクリーンの左横の中段まで飛んで行った。