諦めないから“野球の神”が見捨てないーー春の東京を制した早実・清宮幸太郎の檄
ノーアーチも心配していなかった監督
春季都大会決勝で日大三高に延長12回サヨナラ勝ちし、ベンチを飛び出す清宮(左から2人目)ら早実ナイン。清宮の諦めない姿勢がチームに浸透している 【写真は共同】
帰京から9日後には都大会に突入。最初の3試合はライナー性の単打は出るが凡フライあり、ひっかけた凡ゴロあり。「調子が良くない」と認めていた。バットを変えたり、グラブを変えたり。「気分っす」とはぐらかした。
あるゲームで、強引にボール球に手を出して内野ゴロに。「なんで手を出しっちゃたのかなぁ」と首をかしげる。また、あるゲーム後には、「良くなってる実感はあります。いや、そう思いたいです」と珍しく小さな声のコメントもあった。桜は真っ盛りの初春なのに……。
だが、和泉監督は心配はしていなかったという。
「彼はブレてないし、練習では悪くなかった。(スランプを)かいくぐっていけると信じてるんで」
準々決勝の2本塁打が復調のきっかけ
国士舘との準決勝。3回にインコースのストレートをとらえて、「完璧だった。最近では一番、いい当たり」という打球の飛距離は推定130メートル。この打席、インコースにタイミングが合わず、三塁方向にファウルを2球、打ち上げた後のホームラン。5球の中で修正した意味のある打席だったとみる。
「打てなかった期間、いい経験になった。次にまたこういう時に対処する引き出しが増えました」
春の戦いで熟成した感のある早稲田実
投手陣が打ち込まれ、清宮もホームランの出ないまま、不完全燃焼、中途半端だったセンバツ。そして「センバツロス」も重なる新チームのスタートの難しい春の序盤。そこから清宮が復調し、全体に緊張感が出て、チームのムードも盛り上がって優勝まで駆け上がった。チームが醸成した感がある。
関東大会から夏の本番へ。早稲田実の都内連勝は続くのだろうか。