「戦いを欲しがれ」苦境続くアイホ男子 鈴木監督から新チームへのメッセージ

沢田聡子

スマイルジャパンは経験を重ね進化

ソチ五輪に続き平昌五輪への出場権も獲得した女子代表は、精神的な強さを見せるようになった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 鈴木氏が代表監督として初めて采配した冬季アジア大会で、男子は3位に終わった。一方、ソチ五輪に続き平昌五輪への出場も決めている“スマイルジャパン”こと女子日本代表は優勝。報道でも女子と比較されがちだったが、ルール上ボディコンタクトの多い男子は、体格差によるハンディを女子より大きく背負っているのも事実だろう。

 ただ、女子代表に際立つのは精神的な強さだった。「自分達でしっかり権利をつかんであの(ソチ五輪の)場に立ったのは彼女達にとって大きな経験だったと思いますし、より一段と目標が明確になっている。その差はある」と鈴木監督も認める。

 翻って男子代表を見てみると、開催国枠で出場した1998年長野五輪を最後に、今に至るまで五輪の舞台に立てていない。昨年9月の平昌五輪最終予選でも3戦全敗と世界の壁に跳ね返された。

 苦戦してきた五輪予選の中で特に苦い記憶として残るのは、日光で行われたソチ五輪1次予選(12年11月)だ。ホームの大声援を受けた日本代表だったが、第2戦で以前は格下だったはずの韓国に延長までもつれ込む苦戦を強いられると(結果は3−2で勝利)、最終戦では同格と見られていたイギリスに敗戦。最終予選にすら進めなかった。

 怪我のためこの予選に参加できなかった鈴木監督は「ホームの応援があった分逆にプレッシャーも感じた、とも聞いた。そういうところも含めまだまだ経験を積んでいかなくてはいけない」と振り返る。

「今回(平昌五輪予選)は最終予選に進みましたけど、かなり力の差を感じながらの負けだった。ちょっと目標もぼやけてきているのではないか。もう一回全員が本当に五輪を目指して、気持ち、技術の面も含めて成長しなくてはいけない」

「プレッシャーも含めてエネルギーにしてほしい」

「簡単ではないが、不可能ではない」。厳しい表情のまま、北京五輪への可能性を鈴木監督はそう語った 【スポーツナビ】

 高いレベルの試合を経験する場として、また五輪へのステップとして、世界選手権はとても重要だ。世界選手権に臨むにあたり、鈴木監督は「この大会では、ディビジョンを一つ上がることが当たり前の大きな目標」と掲げる。

「最低でもトップディビジョン(1部相当)にいる国でないと、五輪の権利を取るのは難しい。そのために毎年どうなっていかなくてはいけないか、そのためには何が必要かを組み立てていかなくてはいけない」

 現在3部にいる日本が、北京五輪予選の前にトップディビジョンに上がるのは「本当に簡単なことではない」と鈴木監督も認める。その一方で、「他の国を見ても日本のアイスホッケーの過去を見ても、不可能なことではない。私自身はそう感じています」。

 初めて指揮をとったアジア大会で、監督の意図が感じられたのは若手選手の積極的な起用である。

「今まで代表で戦っていたベテラン達の経験ももちろん大切ですが、フレッシュでエネルギーのある選手、ポテンシャルのある選手も今のチームにはすごく必要なんじゃないか」

 このような考えから、世界選手権代表についても鈴木監督は長く日本男子代表のエースとして活躍してきた久慈修平(王子イーグルス)をメンバーから外し、古橋真来、寺尾勇利(ともに栃木日光アイスバックス)、中屋敷侑史(王子イーグルス)、平野裕志朗(東北フリーブレイズ)といった若手を選んだ。

 鈴木監督が選手達に求めるのは「戦いを欲しがるチーム、選手になってほしい」ということ。「日本代表として日の丸をつけてリンクに立つのは素晴らしいことですが、それだけ注目もプレッシャーもある。そのプレッシャーも含めていいエネルギーにしてほしい」

 五輪という目標に向かい、鈴木監督率いる新生日本代表が第一歩を踏み出す。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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