欧州で躍動するアヤックスの金の卵たち 魅力的なサッカーにオランダ中が歓喜

中田徹

一方的に押し込んだシャルケ戦

17歳のCBながらオランダ代表にも選出されたデ・リフト(中央) 【写真:ロイター/アフロ】

 現地時間3月16日に行われたコペンハーゲン戦の第2レグで相手の2トップを完全に封じ、ファンが選ぶマン・オブ・ザ・マッチに輝いたのは17歳のセンターバック(CB)、マタイス・デ・リフトだった。 この試合で一躍注目を集めることになったデ・リフトは、続くオランダリーグのエクセルシオール戦(1−1)で、自陣でのパスミスから相手に1点を許してしまったが、これをカバーしたのが同点弾を決めたジュスティン・クライファートだった。17歳のCBのミスを、17歳の右ウイングが救ったのだから、スケールの大きな話である。19歳のデンマーク人ストライカー、カスパー・ドルベリもコペンハーゲン戦でポストプレーにさえをみせ、PKも決めてUEFAのマン・オブ・ザ・マッチに選出された。

 アヤックスの選手はまだ若くて、試合によって出来不出来は激しいけれど、それでもコペンハーゲンを凌駕(りょうが)する戦力を誇っている――。それが今季のアヤックスである。

 こうして迎えた4月13日のEL準々決勝第1レグ、シャルケ戦はコペンハーゲン戦に続いて早々にチケットは売り切れ、CLにも負けない熱い雰囲気がホームのアムステルダム・アレーナを覆った。アヤックスの若者たちは、ブンデスリーガ10位(第28節終了時点)のシャルケを相手陣内に押し込み、前半はハーフコート・フットボールを実践した。

17歳のジュスティン・クライファート(左)。今のアヤックスには金の卵がそろっている 【VI-Images via Getty Images】

 取り分け有効だったのはドイツ人左ウインガーのアミン・ユネスの仕掛けだった。MFのデイビー・クラーセン、ドニー・ファン・デ・ベーク、ハキム・ジエクがパスを小刻みに回してからユネスへ。右サイドでDFジョエル・フェルトマン、FWクライファート、MFファン・デ・ベークが相手を崩してから、一気にサイドチェンジのパスを送ってユネスへ。23分にクラーセンの先制ゴールにつながるPKを奪ったのも、39分にマーカーのティロ・ケーラーに尻もちを付かせたのもユネスだった。

 シャルケがこの日、初めてシュートを放ったのは45分になってからだった。1−0で試合を折り返しロッカールームへ戻るアヤックスイレブンにスタンディングオベーションが送られた。

20年ぶりの欧州ベスト4へ「やり方は変えない」

効果的な仕掛けを見せたユネス(右)の活躍もあり、アヤックスはシャルケを2−0で破った 【VI-Images via Getty Images】

 52分、右からクライファートが上げた鋭いクロスを、クラーセンがボレーでこの日、2点目をたたき込む。87分、足をつらせた19歳のアンカー、ファン・デ・ベークに代わり、試合の締めくくることを期待されてピッチに入ったのは、やはり19歳のフレンキー・デ・ヨングだった。

 きっとシャルケはアヤックスにボールを持たせるだろうが、それでも厳しい試合になることが予想されていただけに、内容を伴って2−0で勝利したアヤックスのフットボールに対し、スタジアムは達成感のようなものに包まれた。ペーター・ボス監督は言う。

「われわれは3点目、4点を決めないといけなかった。試合内容には満足している」

『デ・テレフラーフ』紙のバレンタイン・ドゥリーセン記者は同紙のテレビチャンネルで「アヤックスにとって、オランダサッカーにとって、観客にとって、突き詰めるところ誰にとっても素晴らしい夜になった」と解説した。1週間後には敵地、ゲルゼンキルヘンでの第2レグが待っている。“たった”2−0で終わったため、シャルケが1点を先制すると、アヤックスに大きなプレッシャーがかかってくる。

 しかし、アヤックスは敵地でも自らのサッカーを貫く。ボス監督は「アヤックスは今季、ずっとホームでもアウェーでも戦い方を変えてこなかった。今度の試合もやり方は変えない」と言い切った。アヤックスは96−97シーズンのCL以来、20年ぶりの欧州サッカーベスト4の舞台にリーチをかけた。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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