レスラー同士の絆を感じる引退興行 東京03豊本のプロレスあれこれ(10)
亜利弥’選手の引退興行が7日新宿FACEで行われます 【写真:田栗かおる】
なぜ集まってくれたのか?
亜利弥’選手は現役のレスラーでありながら、乳ガンでステージ4です。
現在は背骨、肺、肋骨、胸椎、リンパ節などに転移しています。骨転移により骨が空洞になっていて、医師からは「受け身をとったりするだけで衝撃で死にますよ?」と言われていました。
来年の桜は見れないとも言われてましたから……。
そんな中でも昨年にはデビュー20周年記念興行をしました。
記念興行は無事終わり、リングから生還しましたが、病状的には今でも、定期検診に行くと、「来月はこの数値だとヤバイですね」と毎月言われる状態だそうです。
普通なら入院して放射線治療などをするんでしょうけど、それをしてもガンが飛び散って転移してしまう可能性があるそうです。
現在はホルモン剤治療をしていて、それと骨が強くなる注射を定期的に打ったり、あとは家にこもらず人と会って、楽しい時間を過ごすという治療だそうです。
ちなみにレスラーで現役中にガンを克服したのは小橋建太さん、西村修選手、藤原喜明選手、ミス・モンゴル選手。引退後のレスラーでは、北斗晶さんが記憶に新しいですし、小林邦昭さんもガンに勝ちました。ガンに打ち勝ったレスラーは多いです。
そんな中、引退を決めたのは次にする事を決めたらしく自身のステップアップとして、さらには選手として自分の足できっちりリングを降りたい。それがプロレスへの礼儀と考えているみたいです。
本当の引退試合です。
今回のコラムは、亜利弥’引退興行に参戦する選手を亜利弥’選手の経歴を振り返りながら紹介したいと思います。
デビュー当時の思い出は「お弁当が食べれなかった」
Jd’でデビューした亜利弥’選手。大日本、総合格闘技なども経験し、引退興行では多くの仲間が集まります。 【写真:田栗かおる】
ベルファーレですよ? 時代ですねぇ。
聞くところによると当時は景気も良く、地方も巡業ではなく単発地方興行で飛行機移動だったり、お弁当も立派なのが出てたそうです。
苦労話を聞いてみたら、亜利弥’選手にとってはデビューしたての新人なので、練習に雑用、先輩たちの身の回りの世話だったりで「お弁当を食べる時間がなかったのが悔やまれる」そうです。
練習の厳しい話と思いきや、お弁当が食べれなかった話。
ジャガー横田選手が練習を見ていた訳ですから厳しい練習だったと思われますが、選手にとっては練習が厳しいのは普通の事だったんでしょうね。
<今回参戦のJd’のメンバー>
ジャガー横田選手
ドレイク森松選手
藪下めぐみ選手
坂井澄江選手
賀川照子選手
大日本女子部で活動 巡業先で若手が逃亡!?
20周年興行でも多くの選手が参戦したが、引退興行もそれに勝る選手たちが集結する 【写真:田栗かおる】
当時は大日本プロレス女子部がありましたからね。生え抜きの選手もいましたし、アマポーラとかマルセラとかのメキシカンとかも呼んだりしてました。
今回参戦の藤田ミノル選手、葛西純選手、あとジミークネスJ.K.S.選手。クネス選手も素顔時代に大日本の巡業で一緒だったみたいです。
巡業の思い出を聞いたところ、本間朋晃選手とアブドーラ小林選手と巡業中にトラックで移動してる最中、若手選手がもう辞めると騒ぎだしました。運転していた本間選手がトラックを止めたため若手選手がその場でトラックを降りて辞めてしまったという。
すごい話ですね。でもこれも時代というか、若手が1人辞めても他に変わりなんていくらでもいるという時代。それに若手にとって巡業は大変なんでしょうねぇ。
格闘技のコーチは「タノムサク鳥羽さん」!
「L−1」に興味を持ちLLPWに移籍も消滅。それでもスマックガール、ジュエルスに参戦している 【写真:田栗かおる】
理由は、当時、LLPWが主催していた「L−1」という女子のバーリトゥード大会に興味を持ったからの移籍なんですが……
ただ、移籍した矢先にL−1が消滅という運命のいたずら。
総合への気持ちもある中で、師匠であるジャガー選手が「Jd’に来ないか」と。
それに応じて「Jd’」に再入団。総合に出ながらプロレスもできる環境を作ってくれたそうです。
ちなみに格闘技のコーチは誰ですか? と聞いたところ返って来た答えが……
「タノムサク鳥羽さんです」
DDT所属の、ある種、伝説が多いプロレスラーでムエタイファイターです。
試合中殴られて、衝撃で視界が無くなり、レフリーに俺の目玉探してくれと本気で言った選手です。目玉が落ちたとしても、それを拾ったら治るものでもないと思うんですが……。
まさかそんな鳥羽さんの名前が挙がってくるとは!
どうやら、DDTのリングで格闘技の練習が行われている時期があったそうで、その時に教わったとのこと。
亜利弥’選手曰く、鳥羽さんのローキックを受けて、「ローキックって、こんな痛いものなんだ」と感銘を受けたそうです。
しかし「ちゃんと教えてくれました?」と聞いたら、「ちゃんと教えてくれるところに行こうと思い、風神ライカ選手とかがいる、ヤマキジムに行きました」とのこと。
正解だなと思いました。
あと、鳥羽さんに一緒に教わっていた選手にはナナチャンチンさんがいたみたいです。少し納得でした。
ダンプ、鼓太郎、イオら参戦 ここでしか見られないカードも
鈴木鼓太郎選手も参戦。友達の友達つながりとのこと 【写真:SHUHEI YOKOTA】
ちなみに、スマックガール当時のリングドクターだった木下博勝さんをジャガーさんに紹介したのも亜利弥’選手です!
そしてJd’が解散となりフリーになって様々な団体に上がっていきます。
今回参戦の木藤裕次選手、ケン片谷選手、ミス・モンゴル選手は北海道のローカル団体、北都プロレスで一緒に巡業をまわった仲。
怨霊選手、政宗選手、木高イサミ選手は、フリー時代の練習の場所として当時はバトルスフィアに通っていたみたいで、一緒に練習していた仲。
佐野直選手は気がついたら知り合いになっていたみたいです。
他にも今回参戦で繋がりが気になった選手が多いので聞いてみました。
豊本「ダンプ松本選手は?」
亜利弥’「憧れの先輩です」
なるほど!
豊本「鈴木鼓太郎選手は?」
亜利弥’「友人の紹介です」
一瞬、「ん?」と思いましたが、聞いたら、力になれればということを友人を通しての参戦みたいです。
豊本「紫雷イオ選手は?」
亜利弥’「20周年の興行の時にチケットを買って普通に見に来てくれたのがキッカケです」
それは素敵な話。
豊本「伊藤薫選手は?」
亜利弥’「内装工事のバイトをしたのがキッカケです」
豊本「伊藤選手のお店の?」
亜利弥’「はい!」
意外過ぎて笑ってしまいました。
豊本「食いしんぼう仮面選手は?」
亜利弥’「食いしんぼうさんの奥さんの西堀幸恵さんとJd’のオーディションが一緒だったんです」
凄い! これはマニアも気づかないであろう繋がりでした。
そして最後に、田中将斗選手は亜利弥’選手と地元も同じで同級生。
正直、亜利弥’選手を通してじゃない限りこのラインナップはそろわないと思います。
そして、あらためて、レスラー同士の絆をつくづく感じました。
命を削ってリングに立ち続けるレスラーは、今日大きなケガをするかも知れない、2度とリングに上がれなくなるかも知れない。その怖さを1番分かっています。ライバル団体であろうが、敵であろうが、関係なくリングに立った者だけにある絆を見に行ってあげて下さい。
そして独自の歴史を刻んできた亜利弥’選手が自分の足でリングを降りる姿を見に行ってあげて下さい。
対戦カードや詳細はコチラ
※リンク先は外部サイトの場合があります
4月7日(金)東京・新宿FACE 開場18:00 開始19:00
【対戦カード】
<3WAYマッチ>
鈴木鼓太郎(フリー)vs.佐野直(プロレス佐野魂)vs.怨霊(666)
<シングルマッチ>
伊藤薫(ディアナ)
ドレイク森松(ガッツワールド)
<変則ミックスドタッグマッチ>
ジャガー横田(ディアナ)、ミス・モンゴル(世界プロレス協会)
くいしんぼう仮面(フリー)、賀川照子(西口プロレス)
<シングルマッチ>
藪下めぐみ(フリー)
ダンプ松本(フリー)
<シングルマッチ>
紫雷イオ(スターダム)
坂井澄江(ROH/WOH)
<6人タッグマッチ>
田中将斗(ZERO1)、藤田ミノル(フリー)、木藤裕次(ASUKA PROJECT)
葛西純(FREEDOMS)、政宗(フリー)、木高イサミ(BASARA)
<メーンイベント 時間差バトルロイヤル>
亜利弥’、ジミークネスJ.K.S.(ドラゴンゲート)、ケン片谷(CMA東京)、田村和宏、唯我、土方隆司ほか
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ