【J25周年企画】ロマンティックだったオシムの戦術 「リスクを冒せ! コントロールせよ!」

西部謙司
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多くのチームはバランスの重心を守備寄りにとるが……

ジェフ千葉で展開されたオシム監督のサッカーの特徴をひとことで表現すれば、「リスクを冒す」ということ 【写真:アフロスポーツ】

 ジェフユナイテッド市原(当時、05年からジェフユナイテッド千葉)で展開されたイビチャ・オシム監督(2003年〜06年7月まで在任)のサッカーの特徴をひとことで表現すれば、「リスクを冒すサッカー」になると思う。

 1958年ワールドカップ(W杯)でブラジルが初優勝したときのMVP、ジジは「サッカーは寸法の足らない毛布」と言った。足下に下ろせば上半身が出てしまう、頭からかぶると足下が寒い。攻撃と守備のバランスをとるのは難しい、いや完全なバランスなどないという喩(たと)えである。

 多くのチームはバランスの重心を守備寄りにとる。つまり、まず失点しないことを優先し、攻撃は失点しない程度に行う。何が何でも得点しようとすれば、失点のリスクだけが増大するからだ。サッカーは点が入りにくいボールゲームなので、あまりアテにならない攻撃に注力するよりも、守備から入ったほうが効率的というわけだ。

「壊すのは簡単だが、作るのは難しい」
 オシム監督も認めている。しかし同時に、こうも言うのだ。
「作るほうが素晴らしい人生だと思いませんか?」

 リスクは常にある。どれだけ失点を回避しようとしてもノーリスクにはならないのもサッカーだ。ならば、「リスクを冒せ」というのがオシムの考え方だった。

ノーガード状態をキックオフ時点から意図的に作る

 同点のまま90分間が終了してアディショナルタイムに入るとしよう。そしてどちらのチームも引き分けを望まず、雌雄を決しようとした場合、アディショナルタイムの数分間に90分間で作られた数を上回る決定機が作られることがある。90分間はなるべくリスクを冒さずにプレーしていたのだが、アディショナルタイムに決着をつけようとしたせいで、双方にチャンスが生まれやすくなるのだ。いわゆるノーガード状態である。

 オシム監督は、このアディショナルタイムでのノーガード状態をキックオフ時点から意図的に作ろうとしたともいえる。ただし、「リスクをコントロールしろ」とも言っていた。あえてリスクを冒すかわりに、リスクをコントロールすることで優位に立とうとしたわけだ。
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著者プロフィール

西部謙司

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『4−4−2戦術クロニクル』『サッカー観戦Q&A』。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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