- 室井昌也
- 2017年3月27日(月) 11:00

今年で第4回を迎えた野球の国際大会ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はアメリカの初優勝で幕を下ろした。
決勝ラウンドに進んだアメリカ、プエルトリコ、日本、オランダの4チームの中でアジア勢は日本のみ。第1回ベスト4、第2回準優勝の韓国は前回大会に続き、今回も1次ラウンドで早々と姿を消した。
日韓が決勝戦を戦った2009年から8年。その間、日本は菅野智之(27歳/巨人)、中田翔(27歳/北海道日本ハム)、筒香嘉智(25歳/横浜DeNA)ら新たなスターが現れ代表チームをけん引している。一方で韓国は顔ぶれが大きく変わることなく歳月が流れた。これは韓国の世代交代が進んでいないことの表れでもある。
今年11月には日本、韓国、台湾のプロリーグに所属する24歳以下(U−24。1993年1月1日以降生まれ)、または入団3年以内の選手を対象とした「アジア プロ野球チャンピオンシップ2017」が初開催される。日本にはこの世代に大谷翔平(22歳/北海道日本ハム)、千賀滉大(24歳/福岡ソフトバンク)、鈴木誠也(22歳/広島)らリーグを代表する選手が揃っているが、韓国にはこの大会に出場できるような若手選手は育っているのか。その現状を探った。
高校野球の金属バット禁止が影響

今回のWBC代表選手の平均年齢を見ると日本の27.6歳に対して韓国は30歳。特に打線では李大浩(イ・デホ/34歳/韓国ロッテ)、金泰均(キム・テギュン/34歳/ハンファ)、李容圭(イ・ヨンギュ/31歳/ハンファ)らの30代が中心的役割を担っていた。この韓国の現状について代表チーム最年長の林昌勇(イム・チャンヨン/40歳/KIA)は「韓国のベテラン打者はレベルが高い。そして韓国は日本のように選手層が厚くないので、若い選手がベテランを追い抜くのは簡単ではないです」と話した。
確かに韓国はレギュラークラスと控え選手との実力差が大きい。そんな中でもこれまではベテラン選手を脅かすような若手が出現していたが、近年はそれが乏しくなっている。特に韓国を象徴するような長距離打者の人材難が顕著だ。その背景について多くの野球関係者は「韓国の高校野球のある変化が原因」と話す。それは2004年、アマチュアの国際大会規定の変更に合わせて導入された、高校野球での金属バットの使用禁止だ。韓国では高校球児が木のバットを使うようになってからパワーヒッターが減っているという。
ロッテジャイアンツの金泰均コーチ(キム・テギュン/45歳/上記とは別人)は以前、こう説明してくれた。
「木のバットによってボールが飛ばなくなったので、各高校の野球部は勝つために長打を捨てて確実性の高い打撃を求めるようになりました。以前なら高校時代に金属バットで長打を誇った選手が、プロに入って磨かれていったものですが、最近はそういった選手はほんのわずかで、プロに入ってくるのは俊足を生かしてヒットにするタイプの選手ばかりです」
実際、昨季の韓国リーグ(KBO)で20本以上のホームランを放った韓国人選手20人のうち、高校時代に金属バットでのプレー経験があるのは14人。木のバットで育った選手は6人に留まる。
投手は速球より制球を重視
また高校での木のバットの使用は投手の育成にも変化を与えているという。野球塾でコーチを務める元プロ野球選手の尹東建氏(ユン・ドンゴン/30歳)はこう指摘する。
「木のバットを使うようになってから、球速よりも制球力が重視されるようになりました。最近は速球派の投手が減っています」。
WBC1次ラウンド敗退後、韓国代表の金寅植(キム・インシク)監督はこう嘆いた。
「柳賢振(リュ・ヒョンジュン/30歳/ドジャース)、金廣鉉(キム・グァンヒョン/28歳/SK)以後、韓国には目立ったピッチャーがいない。150キロ台の速球でインコースを突ける投手が出てこなければダメだ」
昨季、韓国で規定投球回に到達した17人の内、10人を外国人投手が占める。残る7人の韓国人投手の平均年齢は30.6歳。金監督の言葉通り、投手の人材も育っていない。