1次R敗退の韓国、世代交代の難しさ その意外な背景と次代のスターを探る

室井昌也

21歳でWBCメンバー入りの金ハソン

21歳ながら第4回WBC韓国代表に選出された金ハソン。俊足巧打ながらパンチ力も兼ね備える 【写真提供:ネクセンヒーローズ】

 今回のWBC韓国代表を見ても、アジア プロ野球チャンピオンシップ2017の参加資格である「24歳以下、または入団3年以内」を満たすのは投手、野手1人ずつしかいなかった。

 若手選手がなかなかレギュラーをつかめない中、今回のWBCに21歳で代表入りした選手がいる。ショートの金ハソン(キム・ハソン/ネクセン)だ。金ハソンは高卒2年目の2015年に140試合に出場。打率2割9分.19本塁打、22盗塁を記録し、この年ネクセンからメジャー移籍した遊撃手、姜正浩(カン・ジョンホ/パイレーツ)の穴を埋めた。昨季も144試合にフル出場し、打率2割8分1厘.20本塁打、28盗塁をマーク。攻守ともに粗さはあるが更なる成長を期待させる若武者だ。

 金ハソンは初参加したWBCについて、「オランダの選手は時折ふざけながら楽しそうに野球をやっていた。WBCはお祭りだから彼らみたいにもっと楽しんだ方がいい」と言って笑顔を見せた。

具滋ウクは容姿も抜群のスター候補

強打に加え、その容姿から女性ファンの人気も高い具滋ウク。将来のスター候補として期待されている 【写真提供:サムスンライオンズ】

 またWBCで代表入りはならなかったが、韓国の若手野手にはもう一人スター選手がいる。サムスンの具滋ウク(ク・ジャウク/24歳)だ。高卒2年目の2013年から2年間軍に入隊し、2軍リーグに属するチーム・サンム(国軍体育部隊)でプレー。その間にファームで首位打者を獲得し頭角を現した。除隊後の2015年にサムスンに復帰すると抜群の打撃センスでリーグ3位の打率3割4分9厘を残し、新人王を獲得。昨季も打率3割4分6厘(リーグ6位)を記録している。

 今回のWBCでも代表入りが目されたが、ポジションが李大浩、金泰均と同じファーストであることと、腰痛の影響で選考から外された。昨年10月、代表予備メンバー50人に含まれなかった時には「何としても代表選手になりたかった」と悔しさを口にした熱いプレーヤーだ。今季はポジションを外野に移している。

 また具滋ウクはプレーだけではなくその容姿への注目も高く、数多くの女性ファンの黄色い声援を浴びている。身長189センチ、体重75キロ。すらりと伸びた長い足に小さくて端正な顔立ち。2015年までサムスンでコーチを務めていた門倉健氏(43歳)は具滋ウクについて「いいバッティングをするし足も速い。男前だし性格もいいです。天は二物を与えた」と絶賛する。

 彼ら以外の24歳以下の注目選手では2014年の新人王で、2年連続打率3割をマークした俊足のセカンド・朴ミン宇(パク・ミンウ/24歳/NC)がいるが、その他にはなかなか見当たらないのが韓国の実情だ。

 近年の韓国球界は安定した人気があり、代表チームのWBC1次ラウンド敗退がリーグの盛り上がりに及ぼすダメージはほとんどない。しかし今回紹介した選手以外にもU−24代表に名乗りを上げるような若手の台頭がなければ、いずれリーグの質は低下し好況も続かないだろう。アジア プロ野球チャンピオンシップ出場に向けた選手の成長は、4年後のWBC、そして韓国球界の未来と無縁ではない。

(※WBC代表の平均年齢は東京ラウンド開幕の3月7日時点。)

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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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