桑田真澄氏が見たWBC「環境整備が日本球界にとって急務」

岡田真理

第4回WBCはアメリカが初優勝を果たした 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 アメリカの初優勝で幕を閉じた第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。惜しくも日本の世界一奪還はかなわなかったが、決勝ラウンドはいずれも技術と気迫のぶつかり合いが見られる好試合となった。
 
 今回は、現地ドジャー・スタジアムで準決勝と決勝を視察した野球評論家の桑田真澄氏に、試合の総括や大会の意義について話を聞いた。

ピッチングで大事なのはコントロール

――まずは、プエルトリコvs.アメリカの決勝戦について感想を聞かせてください。
 
 準決勝の勝ち方からすると勢いはプエルトリコにあるように見えましたが、その流れにストップをかけたのはアメリカの先発ピッチャー、マーカス・ストローマンでした。
 
 彼は低めにボールを集める丁寧なピッチングで内野ゴロを打たせたり、コーナーにきっちり投げ分けて三振をとったりと、とにかくコントロールが抜群でした。身長も173センチとメジャーリーガーとしては小柄ですし、剛速球を投げるわけでもないですが、要所でアウトローに投げ切るコントロールが活きましたね。パワーでぶつかり合う国際試合であっても、ピッチングで大事なのはコントロールだということを、改めて思い知らされました。
 
 また、ピッチャーが打たせた内野ゴロを確実に処理したアメリカの守りも素晴らしかったですね。投手陣を中心としたディフェンスの重要性を再確認できました。
 
――今回は準決勝の2試合と決勝をドジャー・スタジアムで観戦されましたが、現地の盛り上がりはいかがでしたか。
 
 準決勝の観客動員数はプエルトリコvs.オランダが24865人、日本vs.アメリカが33462人でした。56000人収容できるドジャー・スタジアムにしては、少し寂しい印象でした。
 
 ところが、決勝戦は駐車場に向かう車がぎっしり並んでいて、びっくりしました。決勝の観客動員は51565人。3階席まで埋まって、スタジアムは熱気に包まれていました。
 
 アメリカが初めて決勝に進出して、ファンの心にもようやく火がついたという様子でした。プエルトリコのファンも多く、アメリカのファンに負けない熱狂ぶりでした。

国際大会の度に慣れないといけないのは酷

――今度は、侍ジャパンについてお聞きします。準決勝で惜敗となりましたが、どんな課題があったと思いますか。

 小久保裕紀監督が言うように、日本の選手はみんなよくやっていたと思います。課題として挙げるとしたら、選手のプレーを取り巻く環境面についてですね。

 WBCの決勝トーナメントはアメリカで行われます。それが事前にわかっているにも関わらず、日本球界は環境の違いに適応する準備が至らなかった。準決勝のエラーも、野手の経験不足が誘発したものだと思います。
 
 大一番を落とさないためには、たとえば広島のマツダスタジアムのように内野を天然芝にするとか、土も黒土ではなく硬いアンツーカーを採用するとか、できるだけアメリカと同じ環境を整えないといけません。現状では各球団、球場で考え方に任せているのでしょうが、日本球界が本気になって世界一奪還を掲げるのであれば、選手に頑張れと言うだけではなく、関係者が一丸となってプレー環境を整備することも大事ではないでしょうか。

 国際大会のたびにマウンドの硬さやボール、グランドの違いに慣れないといけないのは選手にとっても酷ですし、そういう作業は正直ムダです。国際試合を通じて日本の競技力を高めるというより、アメリカを中心とした海外の環境に適応するだけで大会が終わってしまう。そんなムダを省く努力が、日本球界では急務だと僕は思っています。

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著者プロフィール

1978年、静岡県生まれ。立教大学文学部卒業。プロアスリートのマネージャーを経てフリーライターに。『週刊ベースボール』『読む野球』『現代ビジネス』『パ・リーグ インサイト』などでアスリートのインタビュー記事やスポーツ関連のコラムを執筆。2014年にNPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーションを設立し、プロ野球選手や球団の慈善活動をサポートしている。

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