「準決勝の勝因は基本に忠実な野球」 プエルトリコvs.オランダの試合後会見

永塚和志

「初回の走塁ミスが試合を左右した」

オランダのミューレン監督も敗因に挙げた初回に2つの走塁ミス。写真は無死一、二塁のチャンスで飛び出しタッチアウトの二走シモンズ 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

以下はオランダのヘンスリー・ミューレン監督の一問一答。

――今日はものすごい試合でした。負けたとは言え頭を垂れることはないと思いますが、ただ11回のタイブレークの場面について話してもらえますか?

 われわれは良く戦いました。11回のところは、満塁となりましたが、ダブルプレーに終わってしまいました。その裏、われわれもなんとか凌ぎたかったのですが、最後のバエズの打席の場面では本来低めに投げてダブルプレーを取りたかったのですが、高く行ってしまい(犠飛を)外野へ運ばれてしまいました。

――延長10回に相手投手がウラディミール・バレンティンに危険な球を投げて彼が激高する場面がありましたが、彼の取った行動が反対に相手のやる気を生み出してしまったところはないでしょうか?

 今日の試合はエモーションの詰まった試合だった。パワーのある打者に対して投手が力を込めて投げることはよくあること。あの場面(投手のディアス)は先に100マイル(160キロ)近い投球をし、直後には(バレンティンの)頭の近くに投げてきました。危ない投球ではあったと思いますよ。

 ただし、それが試合の行方を左右したとは思いません。実際バレンティンはその打席で三振しましたから。その後、タイブレークでわれわれは先に得点するチャンスがありましたが、満塁の場面で彼らはそれを凌ぎました。そういうこともあって、私としてはおっしゃってる場面が試合に影響を与えたとは思ってません。

――素晴らしい試合でした。今大会での収穫はどういうものがありましたか?

 このような大切な試合を、勝つチャンスがありながら落としてしまうというのは非常に辛いものです。とりわけ初回、われわれは走者を2人置きながら、それを生かすことができませんでした。その直後に(バレンティンの2点本塁打で)得点はできましたが、試合は膠着し、両軍とも得点することができないイニングが続きました。そして11回にはわれわれは得点するチャンスがありながらできなかった。一方で、彼らは犠飛を決めた。そういうことです。

 ただわれわれの投手陣は非常に頑張ったし、守備陣全体がよく守りました。この大会を通して、われわれがこのレベルで戦えるのだということを確信しました。4年後また戻ってきます。

――今日は敗れてしまいましたが、このチームのパフォーマンスには満足していますか?

 負けて満足するということはないですね。この大会には勝つために来ましたし、今日負けたことで決勝に進むことは叶いませんでした。よく戦いましたが、いくらかメンタル面でのミスをしたところがあります。

――ここまでハードに戦ってきたにも関わらず4年前と同じ準決勝で敗退というのはフラストレーションがたまりませんか?

 フラストレーションを感じるのは初回の走者を置いた場面でのメンタル面のエラーです。シモンズはジュリクソン(・プロファー)がバントを試みたときに塁から少し離れすぎました。プロファーはバントのふりをしただけなのですから。試合の前に選手たちにはヤディア・モリーナの経験値の高さを伝え、あまり塁から離れすぎてしまうと刺されるぞと話しましたが、実際にそれが起こってしまったわけです。

 そして今度はジュリクソンが出塁しながら喜びすぎて塁に戻らず、アウトになってしまいました。これは受け入れがたいものです。この初回における走塁ミスは結果的にこの試合を左右しました。これがなければ勝っていたのはわれわれであったかもしれません。

――10回の場面でプエルトリコのディアスがバレンティンの頭部近くに危険な球を投げたシーンですが、あの時、バレンティンが激高すると主審は何もせず、捕手のモリーナが彼をなだめていました。これについてはどう思われますか?

 あの打席は感情が溢れ出た打席でした。ココ(バレンティン)はあの打席で危険な球が来る前に2度良いスイングをしてました。すると次にはインサイドの球が頭の近くに来ました。どれくらい近くまで来たのかはベンチからはよくわかりませんでしたが、高さとしては頭の高さでした。近年では投手たちも相手を抑えたりする時には拳を突き上げたり、雄叫びをあげたり、叫んだりします。で、あの投球の際にはランス(・バークデイル主審)が割って入りました。私にはそう見えましたよ。

「選手たちは魂を込めて戦った」

バレンティンが今大会4本目の本塁打を放つなど強打ぶりを見せたオランダだが、2大会連続4強で姿を消した 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

――4年前には準決勝でドミニカ共和国に敗れ彼らはそのまま優勝しました。今回も接戦ながらプエルトリコに敗れました。もうひとつの準決勝で対戦する日本やアメリカとのどちらかと決勝で当たるわけですが、この2チームとプエルトリコのどちらが優勝に近いでしょうか?

 全勝のプエルトリコが優位ではないでしょうか。プエルトリコは明日試合がありませんから体を休められますし、その上で水曜日の決勝戦を戦うことができます。プエルトリコはわれわれが今大会で戦った最強の相手です。彼らの成績がそれを示しています。彼らにグッドラックと言いたいですし、それは日本やアメリカに対しても同様です。

――今日はこの決勝ラウンドから招集されたケンリー・ジャンセンが9回に登板しましたが、球数はあまり多くありませんでした。もう1イニング行かせるという考えはなかったのですか?

 われわれとドジャースとの取り決めで、彼は1イニングしか投げないということになっていました。どれだけの球数であろうとです。たった9球だけでしたがすばらしい出来でした。

――タイブレークのルールについてですが、走者をいきなり2人も置くというルールについてはどう思われますか?

 われわれは東京でのラウンドでも日本との試合で11回のタイブレークで敗れました。日本は犠打を決め走者を二、三塁へ進め、そしてその走者を返すことに成功しました。シーズンのこの時期に投手に長いイニングをなげさせないためにもこのルールを採用することは仕方がないところがありますし、これに慣れていくしかありません。もちろんこのような形で敗れるのは辛いものですが……。

――オランダは韓国、東京とトラベルが続く中での戦いでしたが、それがチームにハンディを与えたとは思いませんか?

 いいえ、そうは思いませんよ。いずれの移動でもしっかりとアジャストしてきました。フェニックスへは昨週の木曜日に到着しましたが、悪い旅ではありませんでした。フェニックスへは午後9時に到着しましたが、時差調整はうまくいきました。金曜日に練習をし、木曜日にはアリゾナ・ダイヤモンドバックスと練習試合をしました。ロサンゼルスへ移動して日曜日には再び練習を行いました。ですので今日われわれの選手は準備ができてました。いい投手戦でしたし、われわれにも勝つチャンスはありました。ただチャンスを生かしきれなかったということです。ですが、移動が負けた言い訳にはなりません。

――あなたはサンフランシスコ・ジャイアンツのコーチとしてカンザスシティ・ロイヤルズとの対戦のワールドシリーズでは最終の第7戦を経験しています。その試合と比べて今日の試合の緊張感はどういったものでしたか?

 似てますね。なぜならいずれの場合にしてもやってる面々は何を差し置いても勝ちたいと思っていますし、そのためにはどのようなことでもやるという気概でいます。選手たちは試合の最初から魂を込めて戦いました。両軍ともです。ワールドシリーズも同じです。ロイヤルズとのシリーズでは最後にわれわれのチームのマイケル・モリスが犠飛を放ち勝利しましたが、その試合も今日の試合も込められた魂はものすごいものがありました。

――今大会はベネズエラやドミニカ共和国といった国々が早々に敗退するなど非常に難しい大会となってます。ただあなたのチームのように素晴らしい戦いをしてきたチームが突如、たった1試合で敗退せざるを得ないのはちょっと酷ではないでしょうか?

 WBCをこれ以上長くすることは難しいでしょう。今回は決勝が23日の水曜日に行われますが、もしそこまで戦ったとしたらそのあとシーズンが始まるまでに1週間ほどのトレーニング期間しかありません。という理由で、このようなフォーマットで行われているのです。勝てなければそれで終わり。われわれにはチャンスがありましたが、うまくいきませんでした。それでもこのフォーマットで問題ありません。

3/3ページ

著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント