世界基準を追求するバスケ男子日本代表 イラン戦でお披露目となる新たな方向性

永塚和志
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提供:スポナビライブ

「世界基準」を求めるパヴィチェヴィッチ

 合宿中、「世界で最高のバスケットボールをする」と選手たちに檄(げき)を飛ばした 【写真は共同】

 06年の世界選手権へ向けて、当時のパヴリセヴィッチHC下のチームがそうだったように、パヴィチェヴィッチ氏は選手たちに今後の代表活動でさらに肉体的にも精神的にもより多くのことを要求していきそうだ。

「われわれは世界で一番サイズの大きなチームになることはできない。しかし世界で最高のバスケットボールをすることはできる」

 合宿中、選手にはパヴィチェヴィッチ氏からこうした檄(げき)が飛ぶ場面もあった。「世界で最高のバスケットボール」というフレーズは言葉では平易に感じるが、実践するのは容易でない。 

 日本に高さがないのはもはや仕方のないことだ。であれば、できることを最高の形で行うしかない。日本にとっては激しくディフェンスすることや、ピック・アンド・ロールを効果的に使ってサイズのなさを補いつつ、スピードを生かしてオフェンスに多様性を持たせることが肝要となってくる。

 パヴィチェヴィッチ氏の口からは「代表のスタンダードを上げる」という言葉が幾度か出てきている。その「スタンダード」とは「世界基準」を指している。戦術面でも選手個々の力においても、これからは厳しく世界基準を追求することが要求されていくだろう。イラン戦はその手始めと言っていい。

今後も踏襲されるであろう方向性

 今回の強化試合のメンバーを見ると、富樫、比江島慎(シーホース三河)、金丸には期待が集まる。富樫は今季、千葉でピック・アンド・ロールを有効に使った攻撃を展開し成果を挙げており好調をキープ。比江島も15年アジア選手権ではチームトップの平均得点を記録しチームをけん引した。彼も味方のピックを利用してのドライブに長けており、欠かせない存在となっている。

 金丸はこれまでの国際舞台で国内リーグほどの活躍ができていない印象だが、味方からのパスを受けてすぐにシュートへ移る「キャッチ・アンド・シュート」が多い三河でのプレーとは異なり、代表チームではピックを使ったプレーを練習している。プレーの幅を広げたところを披露してくれるのではないか。

 もちろん東京五輪、またそれ以降のことを考えれば張本や西川貴之(レバンガ北海道)、安藤、そして唯一の大学生ながら非凡な才能を見せる馬場などの若手の選手には、少ないプレー機会の中でも存在感を周囲に焼き付けるどう猛なほどのパフォーマンスを期待したい。

 準備期間の少ない中で迎える今回のイラン戦である。Bリーグの視察はすでにかなりしているパヴィチェヴィッチ氏だが、代表のメンバーとして集めた選手たちが代表チームでどういったパフォーマンスを見せるのかはまだ未知だ。代表が集中的に練習を行うことができるようになるのは、シーズン後の夏場に入ってからと彼も明言している。恐らくは多くの課題も出てくる。その中で代表強化の具体的な方向性や、選手たちの技術面および肉体面で必要とされるものがこの2試合を通して浮かび上がってくるはずだ。

 現体制となってからは選手のスキルを指導するサポートコーチやNBAミネソタ・ティンバーウルブズ等に所属した佐藤晃一氏がスポーツパフォーマンスコーチとして加わっており、個々の選手の成長も期待できる。

「実践に勝る練習はない」とはよく言うが、今回のイランとの強化試合は「最高のバスケットボールを目指す」べく再出発を果たした日本男子代表チームにとってはさまざまなことを試しながら成熟度とスタンダードを上げる、そんな位置づけになるのではないだろうか。

 パヴィチェヴィッチ氏は暫定HCではあるが、夏場までに選定される予定の次期HCにもパヴィチェヴィッチ氏とJBAの東野智弥技術委員会委員長を中心とした今後の代表強化策や方向性が踏襲される可能性は高い。その意味では今回のイランとの強化試合においても、今後の男子代表の姿が浮き出てくるだろう。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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