“世界”を視野に、今すべきこと 3人の名将に問う日本バスケの未来 後編

カワサキマサシ

日本人選手が世界で戦うために、Bリーグで伸ばしていくべきポイントとは 【素材提供:(C)B.LEAGUE】

 大阪エヴェッサ・桶谷大ヘッドコーチ(HC)、西宮ストークス・天日兼作コーチはともにbjを連覇した経験があり、京都ハンナリーズ・浜口炎HCはチームを4度もファイナルズの舞台に導き、2014−15シーズンには歴代最多勝も挙げている。bjリーグ初年度からHCを務め、実績を残してきた3人の名将は、Bリーグ開幕で日本バスケットボールが新時代に突入した今、何を感じているのだろうか。

 後編では世界で戦うために、Bリーグで日本人選手が伸ばしていくべきポイントについてを、3者に同じ質問を投げ掛けて、それぞれの考えを聞いた。

3人が考える指導ポイント

天日コーチは指導する上で「基本的なことを教える」ことを重要視しているとコメント 【素材提供:(C)B.LEAGUE】

 日本が世界の舞台で戦うためには、世界と伍することができる日本人選手を育成せねばならない。一朝一夕にはならないテーマではあるが、それを目指さぬことには果たせるべくもない。指導者である彼らは、日々どのようなことに意識を置いて選手を指導しているのか。

桶谷HC「日本人の個の能力を上げたいですね。だから僕は若い選手たちも含め、どんどんチャレンジさせたい。今の段階では状況判断が悪かったり、経験もなくて勝つスキルはないんですけれど、試合経験を積ませて、試合の局面でチャレンジしてトライ&エラーを重ねていかないと、良い選手は育たないと思います。選手が得られるチャンスは限られています。それに対してしっかりチャレンジし、たとえミスをしても誰かのせいにするのではなく、それを次に成功につなげられるようにチャレンジして成長していってほしい」

浜口HC「そこを意識してということは、ないですね。自分のチームをしっかり指導することが実情です。でもファンダメンタル(基礎的な部分)をしっかりしないと、なかなか勝てないとは感じています。その部分でしっかりしたものを身に付けて、世界レベルで通用するものにさせることが大切だと思う。そのためにやっているわけではないですが、僕は自分のチームではまず、ファンダメンタルをしっかりさせることをやっています」

天日コーチ「最近は基本的なところが疎かになっていて、それだからうまくなるチャンスを逃しているんじゃないかなと思います。育成年代での指導が行き届いていなかったところがあるのかもしれません。ステップの仕方ひとつでも、僕が中学生のころから自分も周りもやっていなかった間違ったステップを踏む選手が今はたくさんいる。僕は基本のムーブを教えるなど、特にオフシーズンは基本的なことが多いです。基本ムーブを教えるときには、ゆっくりやらせる。基本を教えるときに早くやってしまうと、おもしろくないから疎かになる部分がすごく多いんです。ゆっくりやることは、キーだと思うんです」

求められる現場とフロントの協調性

リーグ発展のためには「チームだけじゃなく、クラブの努力も必要」と話す桶谷HC 【写真:カワサキマサシ】

 先にも延べたように、Bリーグは世界で通用する日本人選手の輩出を目指している。チームの現場はもちろん、リーグやクラブとしても果たすべき役割がある。3者はそれぞれの考え方を披露するが、共通しているのは現場とフロントがより協調して活動していくべきであるということ。

桶谷HC「いろいろあって、そのひとつがスポーツエンターテインメントとして、おもしろいものを見せること。これはチームだけじゃなく、特にクラブの努力も必要。バスケをやっていなかった人もおもしろいと思って見に来てもらえるような、そういう時間と空間を提供しないといけないと思います。僕たち現場は、おもしろいと思ってもらえるバスケを追求する。それが集約されたものが、Bリーグになるのかなと思っています。それぞれのクラブがオーナーシップを持って、Bリーグを成功させないといけない。成功させてマーケットに認められたら、日本代表の強化にもつながり、若い人たちにもっと夢を与えられる。健全な育成という部分でも、役に立てるんじゃないかなと思います」

浜口HC「魅力あるリーグにして、各クラブは子どもたちに夢を与えて地域貢献、地域に根付いた存在になる。そういうことが、しっかりできるリーグになってほしいです。選手の強化と同時に、Bリーグを通じてバスケが文化として根付いていくように努力することも本当に大切。そうなって、おじいちゃんやおばあちゃんもアリーナにゲームを見に来て、自分たちのチームだと思ってもらえるようになればいいなと思います。そのためにウチは、京都でしっかり根付くようにしていきたいです」

天日コーチ「まずは常に公正なジャッジの下で、激しい競争がある試合ができる環境を作ることでしょうね。これはコーチも選手もレフェリーも運営も、みんなが関わっていることだと思います。選手もうまくなりたいと思わないといけないし、コーチもいかに教えるスキルを上げるか。レフェリーはどれだけ公正に吹けるかを追求しないといけない。運営側はそこをサポートして、たくさんのお客さんが来て、選手やレフェリーがハッスルする環境を作るかを考えないといけない。そうやって競争力を高めていかないと、絶対に世界に通用しない。その中で勝ちたいと思う選手がうまくなる。そういう環境を作ることが、すごく大事だと思います」

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著者プロフィール

大阪府大阪市出身。1990年代から関西で出版社の編集部員と並行してフリーライターとして活動し、現在に至る。現在は関西のスポーツを中心に、取材・執筆活動を行う。

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