日本ラグビー界の「野獣」となるか? 身長197cm、宇佐美和彦にかかる期待

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「まだまだです」。言葉は変わらないが、内容に変化が……

15年8月の世界選抜戦で、W杯日本代表入りへ必死にアピールした宇佐美(左) 【赤坂直人/スポーツナビ】

 元々、宇佐美は自信を見せることはない。キヤノン入社直後には「トップリーグはレベルが違います。日本代表どころか、レギュラーになるために頑張らないと置いていかれます」と話していた。しかし、ルーキーイヤーに全試合スタメン出場を果たし、日本代表ではワールドカップ直前まで代表に残った。

「全然、まだまだです」。その言葉は変わらないが、内容は変わっていった。

 15年8月の日本代表vs.世界選抜では、キヤノンの同僚で元ニュージーランド代表のアダム・トムソンを強烈なタックルで後退させるシーンがあった。試合後のミックスゾーンでは笑顔のトムソンが、取材を受ける宇佐美の背中を小突いてから通り過ぎた。
「アダムを押し込めたのはうれしかったです。内側の選手が下半身にタックルしてくれたので、上にいきました。でも、まだまだです。一人でも押し込めるようにならないと」

 この時、W杯について「行きたいです。残りは短いですが、アピールしたいと思います」とはっきり言った。結果的にW杯代表には選ばれなかったが、遠慮がちだった宇佐美は少しずつ、目指す位置をアップデートしていた。

「足に力が入らなかった」中学時代から痛めていた腰を手術

腰痛を抱えながらプレーしていたが、11月に手術に踏み切った 【赤坂直人/スポーツナビ】

 しかし、19年W杯に向けてのスタートとなる16年、宇佐美の存在感は薄れていった。スーパーラグビーに参戦したサンウルブズでは、追加招集されたものの出場機会なし。所属するキヤノンでは新加入した同じLOのアニセ サムエラが活躍し、日本代表に選ばれた。そして、10月22日のパナソニック戦を最後に、宇佐美の名前はメンバー表から消えた。腰の状態が限界に達していたのだ。

 中学時代から痛みを抱えていたという腰はトップリーグを戦う中で悪化していた。
「足に力が入らなくて、しびれもありました。右足が冷えてくることも……。キヤノンではラインアウトのサインを出すコーラーもやっていましたが、力が入らないので飛べませんでした」

 診断は腰のヘルニアと、脊柱管狭窄症。「先生に『ずっと症状が出ていたはず。よくこれでプレーしていたね』と驚かれました(笑)」。痛みの中で戦っていた宇佐美は11月22日に手術を行い、今は復活への道を歩んでいる。

サンウルブズで初出場を目指す

腰の痛みがなくなり、スーパーラグビー初出場を目指す宇佐美 【赤坂直人/スポーツナビ】

 2年目を迎えたサンウルブズの合宿。現在は別メニューだが、宇佐美は3月以降の実戦復帰を目指して調整している。
「まだまだですけど、痛みがないまま動けるので全然違います。こんなに違うのか……という感じで、今は不安はないです」と、うれしそうに語る。

 これまで、痛みがある状態でも日本代表としてプレーしていた宇佐美が、ストレスなく動けるようになった時にどのようなプレーを見せてくれるのか……。
「今年は『史上最高の宇佐美選手』が見られますか?」と質問すると、「いえいえ、それよりも一歩一歩です。まずはサンウルブズで1試合出られるようにがんばります」と穏やかな笑みを浮かべた。

 南アフリカ代表のPRテンダイ・ムタワリラは「ビースト(野獣)」の愛称で親しまれ、ボールを持つ度に世界中の観客は「ビースト!」と声援を送る。
 2019年のW杯日本大会で、ラインアウト、タックル、ボールキャリーに暴れまわる宇佐美に「ビースト!」の声が広がったら……。イングランド代表HCとして日本に乗り込んでくるエディー・ジョーンズ氏を「あれが本当にウサミなのか?」と驚かせたら……。
 W杯日本大会開幕まであと2年7カ月。宇佐美の“変化”を楽しみに見守りたい。

(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)

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