サンウルブズ新HCが抱くチームビジョン 今期目指す日本代表との密接な関係

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

サンウルブズの新HCとして、チームの強化方針や日本代表との連携策などを語るティアティア氏 【スポーツナビ】

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けて」の第70回が1月16日、港区の麻布区民センターで開催された。今回の講演者は、ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの新ヘッドコーチ(HC)、フィロ・ティアティア氏。「ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ 2年目の挑戦」というテーマで、サンウルブズの強化方針や日本代表との連携策などが語られた。

ティアティアHCのバックグラウンド

 昨年9月にサンウルブズHCへの就任が発表されたティアティア氏は、簡単な自己紹介から講演を始めた。ニュージーランドでラグビーをプレーし、オールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)にまでのぼりつめた経歴を持つティアティア氏だが、意外にも最初に始めたスポーツは「サッカーだった」と明かす。

「父はラグビーのコーチでしたが、サッカーをやれば足の使い方、周りを見る視野が身につくと思ったらしく、5歳の頃に始めた。サッカーは1年やれば十分だと、1年やったらラグビーに来なさいと言われていて、その通りラグビーを始めた」

 ニュージーランドで生まれ育ちオールブラックスでのキャップ数もあるティアティア氏だが、もう一つ「皆さんお話ししておきたいことがある。それは私がどういう人間かを皆さんに知ってもらう上で非常に大切だからだ」とあるエピソードを語りだした。

 それは、両親がサモアからニュージーランドにやってきた移民であるということ。「両親は異なる2つの島出身だったが、母の出身はマヌソンバという島だった。サモア代表のことを(愛称で)マヌ・サモアと言うが、その語源にもなった島だ」と語るティアティア氏。「国の代表になれたことは非常に恵まれていたが、両親のルーツを頭の中で分かっていて、両親が今まで何をしてきたかというのも理解した上でオールブラックスになった」と、自身のバックグランドを観衆に紹介した。

 また、元オールブラックスで日本のサントリーサンゴリアスでもプレー経験を持つアラマ・イエレミア選手は親戚であり、他にもオールブラックスでプレーした親戚がいると言う。このような、自身の歴史や背景、つながりが「自分の中ですごく大事」と話すティアティア氏。「日本ではタブーかもしれないが、祖父も曽祖父も私も自分たちの先祖を入れ墨で入れている。タトゥーという形で書き表して、誇りを持って自分たちの中に持っている」と自身の考えを来場者に熱弁した。

トヨタ時代の「人生が変わる瞬間」

 日本でプレーしていた時代へと話題は移る。進行を務めるラグビージャーナリストの村上晃一氏から2002年にトヨタ自動車ヴェルブリッツへ加入した経緯を問われると、「ビル・フリーマンから『日本に行ってトヨタに入れ』と言われたから」と即答。ニュージーランドラグビー協会のコーチ部門でディレクターを務めていたフリーマン氏から指導を受けていたこともあり、アドバイスを受け入れ日本行きを決意したようだ。

 また、トヨタ時代には「プレーヤーとして大きな教訓を得た試合」があったと話す。それは2006年2月12日に行われた日本選手権2回戦の早稲田大戦。トップリーグ所属チームが大学生相手に苦汁を飲まさせられた試合である(24−28で早稲田が勝利)。「あの試合は自分にとっても人生が変わる瞬間だった」と当時を振り返る。

「トヨタはあの試合に向けてそこまで準備をしていなかったと思う。一方で、早稲田はあの試合で勝利を収める価値があるチームだった。それは彼らの試合に臨む体勢、フィールド上での様子、私たちに与えてきたプレッシャーもそうだった」

 この試合でティアティア氏が得たものは、「決して準備を怠ってはいけない」という教訓である。「それはラグビーだけではなくいろんなシーンで生かせる」し、その後に欧州でプレーする際も早稲田大戦での敗戦を胸に戦っていたと語った。

日本代表との連携を深めるサンウルブズ

 続いて話はサンウルブズの強化について及ぶ。エドワード・カークと立川理道を共同キャプテンとした今年のサンウルブズ。その意図を村上氏に問われると、「2人とも見本を示して周りを引っ張っていく選手。チームを見渡したときにリーダーになれる素質を持った選手は他にもいるが、そういった選手たちが要所要所で必要に応じて出てきて役割を発揮してくれると思っている。そういったことを全部鑑みてこの2人を選んだ」と説明。

 また、ティアティア氏は「日本代表の強化にどんな貢献ができるのかが重要」ともコメント。今季のサンウルブズの体制は、日本代表のHCにジェイミー・ジョセフ氏が就任したのと同時に編成されたコーチ陣で構成されており、日本代表との連携は至上命題となっている。ジョセフHCとティアティア氏は度重なるディスカッションを行い、「ジャパンをどう強くしていくかのガイドライン」を考えているのだ。

 では具体的にどのようなガイドラインを作成しているのだろうか。ティアティア氏は2つの柱を紹介した。それは「2019年に向けて日本人育成を行い続けていくこと」と「いかにプレーヤーたちをいつもフレッシュな状態にしておくかのマネジメント」。特に後者において日本の場合は、トップリーグ、スーパーラグビー、代表と他国に比べてもハードなスケジュールが組まれており、日本の課題として多くの関係者が認識している。

「プレーヤーのパフォーマンス、そして休息、メンテナンス、そこを順繰りにバランスよくやれることを考えなければいけない」(ティアティア氏)

 例を挙げるならば、スーパーラグビーに参戦する他国のチームの多くは昨年12月に集まり合宿をこなしたうえで2月の開幕に備える。しかし、サンウルブズは日本国内の過密な日程の影響もあり、わずか3週間の準備しか行えない現状があるのだ。

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