“異色対決”が伝えたバスケの新たな魅力 学生とストリート選手、それぞれの思い
スポーツ名門校で“ミスマッチ”なバスケイベント
2回目の開催となったバスケイベント「TSC」。ストリートと大学選抜の“異色対決”が引き出した、バスケの新たな魅力とは? 【CSPark】
この企画、昨年から始まったのだが、残念ながら見逃してしまっていた。ただ、その様子を各所でアップされたコラムやダイジェスト動画で確認し、2回目となる今大会を大いに楽しみに、そして大いに期待して、会場となる日本体育大学世田谷キャンパスへと向かった。
日本体育大といえば、体育教員養成において国内随一の実績を誇り、数多くのオリンピック選手を輩出している名門校。最近、バラエティー番組で同大の「集団行動」(男女数十人が一糸乱れぬ行進をする)が紹介され、「規律を守り、自己犠牲をいとわない精神」を追求する学びの場というイメージをお持ちの方も多いだろう。
そんな日本体育大でストリートボール!? なんともミスマッチな感覚が面白い。なにしろ仕掛け人はストリートボール「SOMECITY」のオーガナイザー・TANAであり、彼の号令により自己犠牲より自己主張で“魅せるボーラーたち”がTEAM STREETを結成。“バスケを究極に遊ぶ”をモットーにパフォーマンスを披露する。
対する大学選抜=TEAM CSPark ALLSTARSは高校時代から脚光を浴び、インカレ上位校に在籍するいわゆるバスケエリートたち。若さと高さ、パワーでは確実にストリートボーラーたちを上回るポテンシャルの持ち主たちだ。
仕掛け人がTSCでかなえたいもの
スポットライトで照らされた選手たちがマッチアップ。ストリートならではの独特の雰囲気が会場を包む 【CSPark】
「彼ら(大学選抜)は確実に、将来の日本のバスケ界を担っていくプレーヤーたちで、プロバスケ(Bリーグ)や実業団で活躍する可能性も持っています。今回のイベントに参加することによって、(バスケを続けていく上での)選択肢が広がればいいなと思っています」
そして、5on5で実現したことの意味については、「TSCは『SOMECITY』で10年やってきたことの積み上げがあるからこそのイベントです。スペースの問題などがあり、『SOMECITY』は3on3からスタートしましたが、僕たちが最初に見た“ストリート”は5on5だし、そこが原点。TSCのようなイベントをもっと発展させたい」と語ってくれた。
では、“選択肢を広げ、ストリートを主戦場”にしているボーラーたちはどう感じているのだろうか? ゲーム前に聞いてみた。
「今までやってきた5on5の中で一番楽しい! 観客のバイブスが違うし、『SOMECITY』とも違った雰囲気で盛り上がってくれます。相手が強いのも楽しい。昨年は負けたので、今年はリベンジですね(笑)」(AB/F'SQUAD)
「ストリートの面々はやることが決まっているし、慣れもあります。学生たちは手探りだと思いますが、こんなバスケもあると教えてあげたい。僕自身、『SOMECITY』に出会って衝撃を受けました。その楽しさだったり、すごさだったりをオーディエンスにも知ってほしい。そのためには僕らの力が必要だと思います。ストリートボーラーのプライド、自信を持ってプレーします」(KYONOSUKE/F'SQUAD)
一方の大学選抜からはこんなコメントを聞くことができた。
「ストリートは賑やかでお祭り的な雰囲気。ボールハンドリングはストリートボーラーのほうがうまいかもしれないし、どんどん1on1を仕掛けてくるので、そこは負けないようにしたい。絶対勝ちます!」(青木太一/筑波大)
そう、確かにこれまで味わったことがない雰囲気がある。通常のバスケコートとは違って照明は暗く、ボーラーたちはスポットライトに照らし出される。MCはプレーの説明をするというより、ナイスプレーには称賛の声、いまいちなプレーには強烈なダメ出しで叱咤激励(しったげきれい)。DJやミュージシャンによるビートの利いた音楽も相まって、アリーナ全体がストリートの世界へと誘われていく。