歴史的な「4回転合戦」と「精神戦」 羽生、宇野、宮原が挑むGPファイナル

ミスが1つも許されない激戦の女子

激戦が予想される女子で一歩抜け出しているのがエフゲーニャ・メドベージェワ(右)。安定感ある演技で連覇を狙う 【坂本清】

 男子が4回転を繰り出し合う派手な戦いなのに対して、女子のジャンプ構成はほぼ横一線。ミスをした者が脱落するという、シビアで厳しい精神の戦いとなる。誰もが「3回転+3回転」またはそれと同等の連続ジャンプを最高難度の技として織り込み、その正確さと質を競う状況だ。

 その中で、一歩抜けているのはエフゲーニャ・メドベージェワ(ロシア)。昨季にシニアデビューしてから、安定感を保ち続けている驚異の17歳である。「3回転+3回転」の成功率はほぼ100パーセント。さらにジャンプに余裕があるため、手を上げて跳んだり、難しい入り方をするなど、加点を稼ぐ。スピン、ステップの技術も卓越し、さらに深い曲想表現までできるというオールラウンダーの彼女。優勝を狙うというよりは、自己ベストの更新に向けて、さらなる演技のクオリティーを追求している。

 またメドベージェワを追いかけるようにして、ロシア女子3人が熾(し)烈な争いを繰り広げる。これが3度目のGPファイナル出場になるアンナ・ポゴリラヤは、メダル獲得はまだない。ジャンプが安定した今季こそ、初のメダルを手にしたいところだ。

 また身長の伸びとともに苦しんできたエレーナ・ラジオノワも、やっと成長が落ち着き、今季はジャンプの質が上がってきた。シニアデビューした13−14シーズンに比べて大人びた演技力も身につき、表現力の幅も拡大。およそ2年に及ぶスランプから脱出し、GPファイナルで頂点に立つ可能性もある。

 そして今季シニアデビューのマリア・ソツコワは、ロシアが長年温めてきた、スタイル抜群の美女。身長170センチの長身ながら、成長が落ちついたことで今季はジャンプの成功率が高まった。可憐(かれん)で叙情的な表現力も魅力的で、順位に関わらず大会に華を添えてくれそうだ。

宮原はロシア勢の脅威となれるか

前半戦はミスもあり、苦しんだ宮原知子だが、新しい表現領域にも挑戦しており、確実に進化を遂げている 【坂本清】

 ロシア勢4人に挑むのは、カナダの21歳ケイトリン・オズモンドと、宮原知子。オズモンドはここ数年のケガとの格闘を乗り越え、精神的に成長した。今季は思い切りスケートをできるうれしさと、カナダの選手らしいパワフルさが合わさり、スカッとするほど豪快な「3回転+3回転」を決めている。

 また宮原は、珍しくミスに苦しんだ今季前半だったが、NHK杯フリーで演技の手ごたえをつかんだ。今季は、ショートは可憐に、フリーは力強くといったように、新しい表現領域に挑戦中。少しずつ、しかし確実に進化していく宮原は、シーズンによって波のあるロシア女子にとっては脅威だろう。

 女子は、ジャンプの質や演技に差はあるものの、ジャンプの成功次第で簡単に得点は逆転できる。ミスが許されない精神戦をどう切り抜けるか。選手のメンタル面での成長と、その背景のストーリーに注目したい。

(文・野口美恵)

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