理に適っているサウスゲイトの監督就任 イングランドの悲願だった“世襲”人事
代表監督にサウスゲイトが正式就任
イングランド代表監督に正式就任したサウスゲイト 【写真:ロイター/アフロ】
識者や元代表プレーヤーからもサウスゲイトを現時点での最適任者と見なす声があったこともあるが、アラダイス解任発表の時点でFA(イングランド協会)の腹は決まっていたと考えるべきだろう。むしろ、サウスゲイト以外はありえない状況だったからだ。
アンダーエイジ代表監督としての経験は十分、その成績も上々でケチのつけどころがほとんどない。ロイ・ホジソン時代からシニア代表との連携も緊密だ。若返り、世代交代が進行中の今、A代表の多くのプレーヤーが何らかの形でサウスゲイトと交流があり、実際に相互信頼の土台が整っている。ましてや、今後さらなる若手の成長を期待しなければならないとなれば、サウスゲイトは絶好の、願ってもない橋渡し役にもなる。
つまり、プレーイングスタッフサイドからの疑問や異論はかけらもない。しかも、自身が90年代後半の“スリーライオンズ”(イングランド代表の愛称)でバックラインを支えたバリバリの元代表。すべてが理に適っている。
“昇格”はホジソン時代から既定路線?
U−21イングランド代表を率いていたサウスゲイト監督(写真は2015年) 【写真:ロイター/アフロ】
ここまで、ひょっとしたら結果論で理屈を正当化していると思われる向きもあるかと思う。しかし、FAにとってこの「代表監督:アンダーエイジ→シニア禅譲」は、かねてよりの悲願でもあるのだ。
ちょうど、1970〜80年代を席巻したリヴァプールFCで恒例となっていた、いわゆる「ブーツルームの伝統」(歴代の副監督が監督職を“世襲”する人事。伝説の名将ビル・シャンクリー以来、少なくとも4代これが続いた)さながらに。なぜなら、副監督(アンダーエイジ代表監督)こそが誰よりも“双方”のチームを知り抜いている存在に違いないのだから。
しかし、理想と現実は往々にして結びつかない。フットボールの質そのものがドラスティックに変化したこともある。特に、90年代後半以降は、メンタリティーの異なる異邦の助っ人プレーヤーが大挙して流入してきた。こうなると、アカデミーから、もしくは十代の年齢から徐々に経験を積んでトップチームに上がるという、本来の“王道”は通用しにくくなってしまう。