【リアルジャパン】レジェンド王者・大谷が語る“戦い”と“ベルト愛”「“いい試合”と思って見たら大違いですよ」

長谷川亮

12・7リアルジャパンでタカ・クノウを相手に初防衛戦に臨むレジェンド王者・大谷晋二郎 【(C)リアルジャパン】

 9月に船木誠勝を破り、第11代レジェンド王者となった大谷晋二郎は、リアルジャパンプロレス「GOLDEN AGE OF THE TIGER 〜初代タイガーマスク35周年記念大会〜」(12月7日、東京・後楽園ホール)でタカ・クノウを相手に初防衛戦に臨む。リアルジャパンの旗揚げのメイン(2005年6月9日、後楽園ホール)で、初代タイガーマスクの対戦相手を務めた大谷が、初代タイガーの35周年記念大会では王者としてメイン出場となる。死闘となった船木戦、そしてベルトへの愛着と金曜夜8時の思い出、リアルジャパン2016年の締めくくりとなる“戦い”へ、大谷が熱く、熱く語る。

ベルトが大谷晋二郎を求めていたと思いたい

日に日に深まっていくベルトへの愛着を語る大谷 【(C)リアルジャパン】

――まずは船木誠勝選手を破り、第11代レジェンド選手権王者となった前回の試合を振り返ってお願いします。

 間違いなく命がけの戦いで、正直試合後半の記憶がないんです。後で聞いたら、蹴りがアゴに入って、そこから後の記憶がなくて。でも、記憶がない中で気づいたら僕のところにベルトがあったので、ベルトも大谷晋二郎を求めていたと思いたいです。このベルト、僕は魂が宿っているんじゃないか、生きているんじゃないかと思っていて、きっとまだ大谷晋二郎から離れたくないと言っている気がしています。奪取から2カ月が経っていますけど、持っていて愛着が湧いてきているし、ZERO1の大会でもよく持って上がっています。

――やはり、死闘を越えての戴冠であったこと、そして初代タイガーマスクが認めたベルトということが深い愛着の元になっているのでしょうか。

 記憶がない中でも僕の下にあるっていうことは、ベルトもリアルジャパンも、そして神様も大谷がこのベルトを持っていてくれと思っているんじゃないかなって。仮に思っていなくても、僕が思っていると言ったらそう思っているんです。そういう思いで、僕は軽い気持ちでこのベルトを持っている訳ではないので、だからこそZERO1のリングでも僕はこのベルトを持って上がる訳です。

――「僕が思っていると言ったらそう思っている」、まさに大谷選手はそのように自分が強い思いを持つことで、道を切り開いてきたところがあると思います。

 僕はそういうことがたくさんあります。さかのぼれば子どもの頃から「俺はプロレスラーになるんだ」と言って、周りの人は誰も本気にしなかったかもしれないけど、今プロレスラーになって、小さい頃憧れていたタイガーマスクの団体のチャンピオンになっている訳です。もう子どもの頃から考えたら、「奇跡」という言葉も超越するくらいの出来事だと思います。だから僕は、自分が思ったことを誰もが認める、真実にしていくことが、もしかしたら自分の役目かもしれないと思っています。

――自分の目指すものや志に対し、周りはとやかく言ってくるかもしれませんが、やはり強く思うこと・願うことというのは大事であると。

 逆にいろいろ言われた方がいいんです。例えば僕が「みんなが求めるチャンピオンだ」って言っても、「ふざけるな、お前じゃねぇよ」って言われなきゃ反骨心が出ないんです。

――たしかに大谷選手は昔から、そういった反骨心を自分の力に変えてきました。

 そうです、反骨心に揉まれた人間こそ強くなれると僕は思っているので。チャンピオンになってもその気持ちを忘れちゃいけない、そう思ってやっています。

「金曜夜8時にのつもりで戦う」発言の真意

――今回の挑戦者、タカ・クノウ選手と臨んだ会見では「金曜夜8時に生中継されているつもりで戦う」と話していましたが、大谷選手にとって“金曜夜8時”の思い出を教えてください。

 佐山先生、タイガーマスクで言えば、金曜8時に放送が始まって、小林邦昭さんとの戦いがすでに始まっていたんです。そして試合の最中、小林さんがタイガーのマスクを裂いて、破れた瞬間にCMになったんです。そしてCMが明けたらタイガーがもう違うマスクをかぶっていて。「一体CMの間に何があったんだ!? 」って、あの印象がすごく強いです(笑)。でもそういうワクワク感というのを僕はもうダイレクトに感じていましたから、それぐらいの気持ちで見てくださってる人がいるんだという思いで僕はリングに上がります。テレビ中継で流れてないにしても、流れていると勝手に思ってリングに上がりたい。だからといってみんな勘違いしてほしくないのは、僕は“いい試合をしよう”“綺麗な試合をしよう”なんて、さらさら思っていないんです。あの時代のプロレスは、やはりスゴいものと同時に“戦い”でしたから。だから「金曜夜8時のつもりでやる」と言っても、下手したら1分で終わるかもしれない。プロレスにはそういう戦いもあるし、そういう戦いをもしかしたらタカ・クノウ選手とだったらできるんじゃないかと思います。

――では、大谷選手が今回見せるのは“試合”ではなく“戦い”だと。

 僕の中で“いい試合”をしようとする気はないです。僕はいい試合・綺麗な試合よりスゴい試合、驚きのある試合をやりたい。逆にタカ選手とだったらそういう試合じゃなきゃダメだと思います。タカ選手のことは僕は人から話を聞いてしか知らないけど、総合の世界から来たタカ選手が綺麗なプロレスをして面白いですか? 僕はそう思います。

普段見せない“大谷ワールド”を出すかも

クノウ戦では「いい試合・綺麗な試合をやるつもりはない」とキッパリ 【(C)リアルジャパン】

――この試合は初代タイガーマスク35周年の最後を飾る試合であるとともに、リアルジャパンプロレスの2016年を締めくくる一戦ともなります。

 これは何の運命なのか分からないですけど、リアルジャパンの旗揚げも僕メインをやらせてもらっているんです。リアルジャパンのスタートも僕、35周年という記念の最後も僕、だからといって僕は所属選手ではないですし、これは何か不思議な縁というか運命というか。だから全てに、僕は求められているのかなと。そういう風に思ってやっています。今のリアルジャパンは大谷晋二郎だろって。なんせチャンピオンですから。チャンピオンがそういう気持ちを持っていなかったら、やってられないですよ。そういう気持ちで僕はリングに上がりたいし、そういう僕からしてタカ選手は未知の相手で、もしかしたらこのベルトの防衛戦に最適の相手なのかもしれないです。

――これまでの大谷選手とはまた違ったものが見せられるというか。

 タカ選手もお客さんも、驚く試合とプロレスを見せたいです。もしかしたら普段みんなが見ていない“大谷ワールド”というものをそこで出すかもしれません。あまり普段出さない大谷晋二郎っていうのも、僕はたくさんありますから。僕はひねくれ者なので、みんなが望んだことはやりたくないっていうのもありますし。だから、“いい試合”と思って見たら大違いですよ。僕はよい意味で、予想を裏切るチャンピオンでありたいと思います。

――前回お話をお聞きしたのは9月大会直前、オリンピックが終わった直後でした。大谷選手はレスリング女子で唯一メダルを獲ることができなかった渡利(璃穏)選手が印象に残ったと話をされていました。その渡利選手は血液のがんである悪性リンパ腫であることが明らかになり、闘病しながら東京オリンピックを目指すことを表明されました。これを受けエールをお願いします。

 前回も言いましたけど、倒れた人間や挫折を味わった人間が再び立ち上がった時、僕は1番人に勇気を与えられると思っています。彼女は今立ち上がろうとしている訳で、その立ち上がろうとしている中でまた壁が現れてしまった。僕はお会いしたこともないのに無責任なことは言えないですけど、それでも勝手に言わせてもらうと、その巨大な敵も跳ねのけて立ち上がってくれるだろうと思うし、僕はそれを心から応援したいです。

――そうやって立ち上がる姿こそ、大谷選手がこれまで見せてきたもののような気がします。

 そうですよ、プロレスで何を伝えるかといったら、何遍も立ち上がって頑張る勇気。それを与えるものがプロレスなんです。プロレスにはいろんなメッセージがあるけど、僕が伝えるメッセージはそこです。

――分かりました。それでは最後に改めて、試合への意気込みとメッセージをお願いします。

 今のリアルジャパンプロレスのチャンピオンは大谷晋二郎です。それなりの責任感を僕は持っているつもりです。リアルジャパンの今年の締めくくり、佐山先生の大事な節目の大会で、大谷晋二郎がチャンピオンでよかったとみなさんに思ってもらえるような大会にします。プロレスってスゲぇな、またプロレス見てぇなと思ってもらえる試合をしますので、ぜひ会場に足を運んでください。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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