懸念を打ち消す復帰を飾ったパッキャオ “金の亡者”メイウェザー来場の意味は?
パッキャオが再びタイトルホルダーに
引退から7カ月ぶりの復帰戦で勝利し、再びタイトルホルダーになったパッキャオ 【Getty Images】
試合後のそんなコメントを聴いても、今のマニー・パッキャオ(フィリピン)にはかつてボクシング界を席巻したデストロイヤーらしさを感じられない。しかし、全盛期を遥かにすぎても、野生的な迫力を失っても、パッキャオが依然として世界最高級のボクサーであることを証明する戦いではあったのだろう。
現地時間11月5日――。ラスベガスのトーマス&マックセンターで行われたWBO世界ウェルター級タイトル戦で、挑戦者のパッキャオは王者のジェシー・バルガス(アメリカ)からダウンを奪って判定勝ち(118−109が2人、114−113が1人)。7カ月間の“短い引退”後の復帰戦を制するとともに、比国の英雄は再びタイトルホルダーに返り咲いた。
忙しすぎるパッキャオに疑問視も
議員の仕事との両立に疑問視を持たれていたが、その影響を見せない戦いぶりだった 【Getty Images】
試合後、タイトルを失ったバルガスはそう語り、老雄のクイックネスとスピードに脱帽した。中でもタフな王者に尻餅をつかせた第2ラウンドのパッキャオの左ショートのカウンターはお見事。そして、何より印象的だったのは、37歳になったパッキャオが依然としてフルラウンドを動き続けるスタミナを誇示したことである。
今回の試合前、今年5月に上院選挙で当選し、議員になったパッキャオのタフなスケジュールが話題になった。昼間は国会議員として働き、朝、晩にトレーニングをこなす日々。これまでの下院よりずっとハードだと言われる上院での義務をこなしながら、復帰戦に向けて満足な調整ができるのか。
「2つ(ボクサー&議員)を合わせたら仕事の時間は14時間にも及ぶ。ジムは上院のすぐ近くだから、幸いにも交通渋滞に苦しむ必要はない。ただ、友人に会ったりする時間はなく、仕事とトレーニングで1日は終わるんだ」
ファイトウィーク中にはパッキャオ本人もそんなコメントを残していた。スケールの大きな二足のわらじの聴こえは良いが、あるフィリピン人記者は「パッキャオが2つを両立させようとすることに好意的な国民ばかりではない」とも述べている。そして、今戦ではその常軌を逸した忙しさの影響が出ても不思議はないとも囁かれた。
10歳若いバルガスがスタミナ切れだった
第2ラウンドにダウンを喫した後も、バルガスは中間距離でじっくりと構え、右ストレートと左フックでカウンターを狙ってきた。中盤ラウンドにはパッキャオが特に右ストレートを浴びるシーンも度々。危険を感じたフィリピンの雄は、以降は深追いはし過ぎず、様々なアングルからパンチを繰り出して慎重にポイントを集めていった。
「パッキャオとの対戦はチェスを速いペースでプレーしているかのよう。常に気を配っていなければならない。多くのパンチが飛んでくるからね」
バルガスも感嘆した通り、頻繁にギアを切り替えてスピーディな連打をまとめてくるサウスポーに対処するのは並大抵のことではない。年齢を重ね、KO勝利から遠ざかっているパッキャオだが、その過程でペース配分とポイントの取り方は向上している印象がある。案の定、終盤にスタミナを失っているように見えたのは10歳も若いバルガスの方だった。
今年4月のティモシー・ブラッドリー(アメリカ)戦に続き、バルガスも明白に下し、これで実力者に2連勝。パッキャオはまだ戦える。7カ月ぶりの実戦で答えを出し、来春にはさらなるビッグマッチが視界に入ってくるはずである。