懸念を打ち消す復帰を飾ったパッキャオ “金の亡者”メイウェザー来場の意味は?

杉浦大介

リングサイドに陣取ったメイウェザー

リングサイドにはメイウェザーも観戦に訪れたが、その意味は…… 【Getty Images】

「フロイドが来た!」 

 パッキャオがリングに登場する前のこと。セミファイナルのWBO世界フェザー級タイトルマッチ、オスカル・バルデス(メキシコ)対大沢宏晋(ロマンサ雅)戦が佳境にさしかかった頃、筆者の座る記者席の背後からそんな声が聴こえてきた。

 なんと無敗の5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(アメリカ)が通路から現れ、リングサイドに腰を下ろす。場の空気を変える存在感は健在。メイウェザーはそのまま娘とともにリング下に陣取り、パッキャオの試合を悠々と眺め続けたのだった。

 49戦無敗のまま昨年9月に引退表明したスーパースターだが、現役復帰を予想する声は後を絶たない。今回はパッキャオが招いたというが、“マネー(金の亡者)”を自称するメイウェザーは単にファンとして試合を見に来る選手ではない。ライバルの招待を受け入れたことには、どんな意味があったのか。

2人の“マネーメーカー”の再戦は?

「ウェルター級なら誰が相手でも構わない。次もプロモーターが選んでくれた選手と戦うよ」

 バルガス戦後にはそう述べたパッキャオの方も、注目度はすでに大きく下落し、ビッグファイトのオプションが数多くあるわけではない。上昇中のテレンス・クロフォード(アメリカ)は危険な上に知名度が低いし、対戦がよく話題になるアミア・カーン(イギリス)は5月のKO負け(対サウル・アルバレス)後はリングを離れている。キース・サーマン(アメリカ)、ダニー・ガルシア(アメリカ)といったウェルター級の強豪たちも、まだまだビッグイベントの顔になるにはスケールが小さい。そんな状況下で、現実的にパッキャオの相手役を務めて、一般的な関心を惹きつけられるのはメイウェザーだけである。

 昨年5月に行われた第1戦の内容が不評だっただけに、リマッチが実現しても興行成績はガタ落ちが確実。ただ、PPV購買数(約460万件)、入場券売り上げ(約7200万ドル/約74億円)という初戦のとてつもない興行収入が半分から3分の1に減ったとして、依然として巨額が動くビッグイベントになることに変わりはない。

 そして、手の内を知った選手を相手に再び莫大なファイトマネーを稼ぎ、キャリア通算50勝目を目指せるという意味で、パッキャオはメイウェザーにとっても美味しい相手だろう。だとすれば――。

 パッキャオ、メイウェザーが再び相見えることがあるならば、ターゲットはおそらく来年5月のシンコ・デ・マヨ(メキシコの祝日)。すでに“世紀の一戦”ではなくとも、依然として興味はそそられる。再戦には一部のファンから反発も多いだろうが、結局のところ、ボクシング界のマッチメークはカネ次第。今後しばらく、近年のボクシング界が生んだ2人のマネーメーカーの行方に再び注目が集まることになりそうだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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