新生ジャパンが大敗「意識の共有」に差 斉藤祐也がアルゼンチン戦を解説

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一瞬の判断力の差がスコアにつながる

突進するLOアニセ サムエラ。フィジー出身の30歳が、日本在住9年目にして代表デビューを果たした 【築田純】

――アルゼンチンは倒れながらのパスや、バスケットボールのようなパスなど難しいプレーを成功させていました。

 彼らは国際大会を戦って判断力が上がっています。同じメンバーで強度の高い試合をこなす中で、「この局面ならこのプレー」という意識を共有できていました。私たちから見れば難しいパスに見えても、彼らにとってはイチかバチかのギャンブルではないのです。

 私はフランスリーグでプレーしたことがありますが、シーズン序盤は驚くほど簡単なミスばかりです。しかし、シーズンが深まるとパスがつながり、わかっていても止められないような見事な攻撃が生まれます。アルゼンチンはシーズンが深まったような状態でした。

 また、互いのプレーがわかっているので、日本の密集サイドにスペースがあるとわかればSHのランダホ選手が突破して、周りの選手がフォローします。ジャパンはまだお互いの特徴をつかめていないので、スペースがあっても「ボールを持っている選手が走るのか? パスなのか? キックなのか?」と判断が一瞬遅れます。この一瞬の判断力の差が得点に表れたと思います。

――そういう意味でも準備期間は大切なのですね。

 チームが違えば、同じ戦術を採用していても走るコースが違います。今回のジャパンは短期合宿でそうした部分を調整したと思いますが、アルゼンチン相手に国際試合のプレッシャーの中で各選手がどれだけ前に出られるか、冷静に判断できるかは共有できていなかったと思います。

 エディージャパンは長い期間を同じチームで過ごすことで、お互いの特徴を完全に理解した結果がW杯の躍進につながりました。ただ、長い合宿で選手を走らせていたわけではなかったのです。

ディフェンスでもフィジカル、スキルの差

背後から松島のボールに手をかけて落球させたアルゼンチンのディフェンス 【築田純】

――アルゼンチン代表はディフェンスでもボールに絡むタックルなどで日本を苦しめました。

 ボールに絡むタックルはフィジカルの違いが大きいと思います。フランスでもそうでしたが、強豪国の選手は倒すだけではなくて、ボールを奪いにきます。そのため攻めているチームはボールを出すための人数が多く必要になり、球出しが遅れます。時間にすると一瞬なのですが、こうした差が試合全体の中では大きくなっていきます。

 また、松島(幸太朗)選手のボールに手をかけて落球させるなど、タックルスキルが高く、バリエーションも豊富でした。

ファンの期待に応えるチーム作りを

1万8000人を超えるファンが新生・日本代表に声援を送った 【築田純】

――日本代表はこれから欧州遠征でジョージア、ウェールズ、フィジーという強豪と対戦します。

 今回の試合で若い選手が経験を積んで、コーチ陣も選手の特徴がわかったと思うので、どのようにトライを取るかを見てみたいです。

 最後のトライはクイックでボールを出して、SO田村(優)選手とCTB立川(理道)選手のループから、広いスペースをレメキが走り切りました。このようにトライを取れる選手をどう生かすのか、ジョセフHCたちのアイデアを見たいと思います。

――これから長距離移動もあるので、疲労をとりつつ、チーム力を高めるのは難しそうですが。

 確かに状況は厳しいのですが、今日も1万8000人を超えるファンの方がすごく良い雰囲気で応援してくれました。その期待に応えるためには、4年ごとにリセットして代表を一からスタートさせるのではなく、エディージャパンが作り上げたものを引き継いで、結果につなげてほしかったです。

 厳しい言い方ですが、早く手を打たないと時間は過ぎていきます。新しいジャパンもポジティブな魅力をどんどん発揮して、ファンの方々を引きつけるチームになってもらいたいと思います。

(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)

斉藤祐也/YuyaSaito

 1977年4月8日生まれ。身長185センチ、体重100キロ(現役時代)。東京都出身。東京高‐明治大‐サントリー‐コロミエ(フランス)‐神戸製鋼‐豊田自動織機。日本代表キャップ14。

 東京高2年時に高校日本代表に選出。明治大では1年からレギュラーとして大学日本一に貢献し、4年時には主将を務める。サントリーではウェールズ代表を破るなどレギュラーとして活躍する。2002年にフランスのコロミエに移籍。その後は神戸製鋼、豊田自動織機でプレーし、11年に引退。

 現在は「コーディネーション・アカデミー」で、子どもたちにさまざまなスポーツ競技を指導する教室を開催。スポーツを通して、体を動かす楽しさを伝えている。

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