ジョセフHC「新しい強みを作っていく」 新生ジャパンの強化方針を語る

スポーツナビ
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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

「アンストラクチャーを生かしたい」

来場者からの質問にひとつひとつていねいに答えていた 【スポーツナビ】

 講演に続いて、来場したファンからの質疑応答が行われた。以下は質疑応答の要旨。

――ジャパンの最大の強みはどこだと感じていますか?

 昨年の日本はルースフォワード(FWの第3列)が強みだった。ただ現状、今シーズンはこういった選手がいない。継続して伸ばすのではなく、新しい強みを作っていきたい。具体的には、相手より少しでも速いプレー、早い対応、アンストラクチャー(崩れた局面)を生かしていく部分だ。

――アンストラクチャーを実現するために、プレー選択はどのようにし、どのように指導していくのか?

 まずディフェンスだが、相手からボールを取り返してアタックに転じるためにやることが肝だ。プレーヤーはディフェンスをしながら、どこにチャンスがあり、どこでチャンスを作り出せるのかを見ながらボールを奪うことが必要だ。

 その上で必要なのは取り返す自信。どこであろうと隙あればボールを奪いアタックに転じる。スペースがあればアタックし、なければキックで攻め込むというマインドをプレーヤーに持ってもらうことが重要だ。

 フィールドの上すべての選手には役割がある。一見カオスのように見えても、一人ひとりに課せられた仕事があるので、そこをしっかりとコーチングしていきたい。

――ディフェンス能力とアタック能力、どちらを重視しますか?

 非常に良い質問だ。自陣で長くディフェンスするのは好ましくない。フィールドポジションがとても大事なので、フィールドの真ん中からその先にいかに進んでいくかが重要になってくる。日本のラグビーは一つのプレーに力を費やし過ぎて疲労してしまい、1本のミスで一気に相手の攻撃に転じられ失点するシーンをよく見る。いつも残念だなと思って見ている。

――選手時代の日本代表の印象は? また日本のHCになってみて変化はあったか?

 選手時代はどの選手も非常にコミットする選手だと感じた。年数を重ねるにつれて日本には頭の良い選手が出てくると思っていた。その中の代表が廣瀬選手だ。99年のW杯の直前にサモアに勝利したが、本当にどの国もW杯に向けてベストの選手をそろえてくると感じた。

 今の日本代表の選手は1対1は十分ではないが、何人かの選手と話すと、「昨年のW杯への準備がハードだった」と言う。まだ昨年のメンバーはW杯を引きずっているというのも感じている。


――フィジカルが一定に達しなければ強豪とは戦えない。フィジカルの目標数値などは個別に提示しているのか?

 目標値は今後作ろうと思う。なぜならフィジカルは必要だからだ。ただし、全ての時間をここに費やすつもりはない。もともと身体が大きな人と戦うには限界があるので、スキルや役割分担、リーダーシップ、マインドセットに時間を割きたいと思っている。

「勝っても負けてもしっかりとやりぬく」

――日本がW杯で決勝トーナメントに入るためには何が足りないと感じているか?

 正直に言うならば欠けている部分はいろいろある。一つ話すならば経験値だ。現在の代表メンバーは昨年から16名も変わっているが、経験値のギャップがあるのは明らか。19年にこれを変えなければいけないが、このメンバーがW杯(のメンバー)に入るかはまだ未知数だ。そして今回入っていない選手や、16名の選手が入ってくるかどうかも未知数なところがある。

――キッキングについてもう少し考えてほしい。ジャパンの15番の第一候補選手は誰か?

 このポジションは3〜4名の候補を考えている。その中で笹倉(康誉)は良い状態だ。五郎丸(歩)がいないという事は残念。なぜならチームには経験や自信も必要だから。ただ、新しい選手もいるので彼らにも機会を与えたい。

――キッキングゲームに力を入れるとのことだが、ドロップボールについてはどのように考えているか?

 非常に必要なスキルだが、テストマッチではなかなかそのような場面が出てこない。ただ、選手には持っていてほしい引き出しの一つだ。プレッシャーがある中で蹴ることができるという選択肢は、持っていていい。接戦の時にドロップボールを蹴るかどうかは状況を見ながらやっていきたい。ラグビーは楽しむ要素も必要なので、そういう意味でも必要なプレーだ。

――日本代表がオールブラックスのような憧れのチームとなるために一番大事なことは?

 まずやらなければいけないのは、エキサイティングになるようなプレーだ。勝っても負けてもしっかりとやりぬく。ストラクチャーできなければ遂行できない。ニュージーランドはそこができるし、歴史を重ねた厚みもある。ニュージーランドと日本はなかなか比較できないが、やるべき仕事をしっかりとやれば結果はついてくると思う。

――ファンに求めるものはいつも温かく見守る姿勢? 熱狂的で厳しい姿勢?

 われわれのようなチームにはファンの存在が大事だ。ラグビーの試合は特にだ。チーム側がやらなければいけないのは皆さんにエキサイティングになってもらうこと。見ていてワクワクしてもらう。みなさんから良い応援、活力があると試合もエキサイティングになるし、そういう活力をもらえるのはファンからだ。

あなたにとってラグビーとは?

 ラグビーは私の人生だ。父からラグビーを教わったし、もともと家族がラグビー一家だった。ラグビーだけでなく、スポーツそのものが人生の一部だと言えると思う。ラグビーが私の人生をいろいろなところに導いてくれたと思っている。家族にも出会わせてくれたし、日本でもまた家族のような存在ができた。去年もラグビーがあったからいろいろな国を150日ほど旅することができた。

 同時に自分の職業でもあり、14年間ラグビーコーチとして生活している。プロのラグビーコーチになっていなかったとしてもラグビーには深く携わっていたと思うよ。

――平尾誠二さんの訃報を聞いて。

 たくさんの良い思い出が平尾さんとはある。一つ挙げるとしたら、あるテストマッチのときに、私が日本語をしゃべれないので、平尾さんがモチベーションを上げるためにいろいろと発破をかけてくれた。それも、言葉が通じないので、わざわざ手紙を書いて。今でもよく覚えているよ。

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