ウインター杯予選で輝いた赤穂ツインズ 千葉バスケ界一丸で夢を現実に
雷太は将来を見据えポジション転向も……
194センチの長身ながらガードとしてプレーする雷太 【石田達也】
市船には195センチのセンター・田村伊織もいる。2人はこの8月にUー18日本代表に選出され、日・韓・中ジュニア交流競技会にも出場している注目株だ。男子決勝では彼らの活躍もあって、市船がセネガル人選手も擁する日体大柏高を85ー71で下している。
雷太は「県大会になると(他チームの)サイズが下がってくるので、小さい選手を1枚入れた方がディフェンスは安定する」(近藤義行監督)という理由で、県大会では4番(パワーフォワード)のポジションに上げられた。しかし試合後のインタビューで近藤監督はこう宣言している。
「将来のBリーグ、全日本を目指すべく、雷太をウインター杯ではポイントガードに置いてチーム作りをしたい」(近藤監督)
本人も「中学校のときまではそこまで身長が大きくなくて、ずっとガードとかでやっていた。他の大きい人に比べれば器用なのかなという感じです」と自らの特性を説明する。中2の「夏には170センチくらいしかなかった」という身長が「中2の夏から終わりまでに8センチ伸びて、3年で10何センチ伸びて、高校でも5センチくらい伸びた」という文字通りの急伸を遂げた。そんな晩熟さが奏功して、高さとパワーに頼らずプレーできるオールラウンダーになった。
今の彼は高速ドリブルを強みとしつつ、トリッキーなパスを駆使するハンドリングも持っている。決勝では見せなかったが「両手でダンクができる」(近藤監督)という特技もあるという。まずは関東1部の強豪・青山学院大で技を磨くことになるが、その先の夢は大きい。
近藤監督は雷太の育成について「田中(大貴/アルバルク東京)みたいなイメージを持っている。大きいからセンターじゃなくて、ああやってドリブルを突ける子はどんどんガードにしていけばいい」と説明する。田中も192センチの身長でスピード、得点力を持つ選手だ。
そしてその将来について「東京五輪は間に合わないかもしれないけれど、次の五輪には間に合うように。そういうふうに大学の先生とも話をしながらやっています」と口にする。
千葉県バスケ界全体にある野心
千葉県予選の決勝は千葉ジェッツの前座試合として同じ会場で行われ、演出面まで“プロ仕様”となった 【素材提供:(C)B.LEAGUE】
29日の決勝は単なる開催地の共用だけでなく、場内アナウンスや照明といった演出面までジェッツが協力した“プロ仕様”で行われた。ジェッツは開幕戦で多くの観衆を集めたA東京に次ぐ観客数を誇る人気クラブ。そんなアリーナでのプレー経験は、選手たちにとって素晴らしい経験になったはずだ。
A東京戦(17時開始)の3時間以上前となる高校男子決勝の時点で、2階自由席は7割方が埋まる盛況だった。その熱気は市船・近藤監督が「何が起こるか分からなかった。(市船の後押しにもなるが)逆にこの環境が相手の力を引き出すということもある」と苦笑するほど。両校応援団の元気もあって、プロを食うような盛り上がりだった。
Bリーグという目標があるからこそ、高校生年代の育成も変わってくる。2メートル近い選手にガードを任せることも、一言で言えば未来への投資だ。近藤監督は「将来はジェッツが千葉県の選手ばかりでできるようになってもらいたいですね」という夢も語っていた。
千葉のバスケ界ではプロクラブが地元に協力し、地元もプロに協力するという互恵関係が築かれている。高校バスケの世界でも未来への投資が行われている。そんなうれしい現実を確認できた、プロと高校バスケの共催だった。
雷太は「Bリーグに入るのはもちろんですけれど、日本代表として活躍したい」と今後の夢を口にする。もちろんこの双子がそれぞれの夢を実現するためには、本人と周囲の努力が欠かせない。加えて今夏のリオ五輪で8位入賞を果たした女子に比べると、男子はまだ世界との距離が遠い。しかしBリーグがバスケ界のエネルギーを高めつつある今、彼らの夢を現実までいざなう道は開けつつあるのだ。