ユース年代の強化へ、JYDが行う新施策 ナイキとの連携で世界への挑戦をサポート

平野貴也

オリベイラコーチが促した「プレースピードの向上」

オリベイラコーチ(左)がトレーニングで選手たちに促したのは「プレースピードの向上」だ 【平野貴也】

 新設が発表された「NIKE ACADEMY TOKYO supported by JYD」は、発表当日に活動内容のトライアルトレーニングを披露した。今夏の全国高校総体(通称インターハイ)優勝校であり、プレミアリーグEASTに属する市立船橋高の選手を対象に、エドゥアルド・オリベイラコーチがナイキアカデミーで行う練習を一部実践した。まず、狭いエリアでの6対2のポゼッション。次に、シュートシーンにフォーカスしたゴール前での3対2の攻防。そして、アウトコートにフリーマンを設けたビルドアップチーム対カウンターチームのミニゲーム。最後は、フリーマンを設け、フルゲームを行った。

 市立船橋のDF杉岡大暉(湘南ベルマーレに加入内定)は「全部が対人練習だったので、負荷が掛かった。最初の6対2は(単なるポゼッションではなく)待機している4人が声を掛け合って、守備の2人と入れ替わってよいというものでした。守備の動きとしては、実戦でも4枚の中盤と2トップを動かす形などで使えると思いました。あの練習を連動してできれば、前線からのプレスに速くいけるようになると感じました」と手応えを語った。

 オリベイラコーチは、一貫してプレースピードの向上を促した。動作だけでなく、情報収集や状況判断を含めた"速さ”だ。「われわれは、4つの大きなスキルにフォーカスしている。まず、相手がいる状況における『テクニック』。次に、ピッチ上のスペースを理解して(指示を受けて動くのではなく)、自分で決断する『インテリジェンス』。それから、瞬間の適切な『ポジショニング』。最後に、素早く運動し続ける『強さ』。それが、プレーにスピードを求めるわれわれのメソッドだ」と指導コンセプトを説明した。

 さまざまな速さを求められたことは選手にも伝わっており、攻撃の軸であるMF高宇洋(ガンバ大阪に加入内定)は「3対2の練習では、ワンタッチでシュートを打つとか、速いテンポの中でのプレーを求められたので、普段からもっと磨いていきたい」と刺激を受けていた。

プレミア、プリンス両リーグで特別トレーニングを実施

JYDが取り組む新たな試みによって、若い世代が持つ大きな可能性は膨らんでいく 【平野貴也】

 翌日には、JFAアカデミー福島でもトライアルトレーニングが実施された。来季はプレミアリーグ、プリンスリーグに所属するチームを対象に、特別トレーニングを実施するという。毎週のように公式戦が行われる現状で、外部指導者によるトレーニングを採り入れることは容易ではない。加えて、それぞれのチームに指導哲学があるため、極端に異なる指導アプローチになると選手が混乱するという心配点もあるが、メリットも十分に考えられる。

 市立船橋の朝岡隆蔵監督は「いろいろな指導者に刺激をもらうことで選手は伸びる。たとえば、代表に呼ばれたときには、チームとは違う指導者の要求に反応してフィットしなければいけないので、良い刺激になると思います」と理解を示し、さらに「練習テーマを事前にディスカッションすれば、指導者にとっても刺激になる」と意見を加えた。

 現状はプレミアリーグやプリンスリーグのチームに対して行うことで、新設するナイキアカデミー東京の周知を促す段階にあるが、今後さらに下層レベルのチームや下層年代に広がりを見せれば、セレクション型スカウトと相まって、日本の育成年代全体の底上げに大きな刺激を与えることになりそうだ。また、ユース年代のチャンピオンチームを海外派遣する点も魅力となる。イギリスで活動するナイキアカデミーとの交流に留まらず、招待試合派遣などにもつながれば理想的だ。

 朝岡監督は「海外に行ける機会を設けてもらえるのは、ありがたい。海外での真剣勝負は、国内の練習試合の3〜5倍の価値がある」と話した。所属するチームやリーグカテゴリーを問わず、世界へ挑戦できる機会が設けられる。日本サッカーの裾野拡大を目指すJYDの新たな取り組みにより、若い世代が持つ大きな可能性は、さらに膨らんでいく。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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