18歳の新星・阿久津咲子が代表へ 新たなスタートを切るシンクロ日本

沢田聡子

変則的な形式で行われた代表選考

 リオデジャネイロ五輪代表の選手と、これから代表入りを目指す選手は、肌の色で見分けがついた。10月10日、東京・国立スポーツ科学センターで、シンクロナイズドスイミングのアジア選手権(2016年11月、東京)・世界選手権(17年7月、ハンガリー・ブダペスト)に向けた代表選考会が行われた。

リオ五輪で表彰台に返り咲いたシンクロ日本。アジア選手権、世界選手権に向けて新たなスタートを切る 【写真は共同】

 デュエットでは08年北京五輪、チームでは04年アテネ五輪を最後に遠ざかっていた表彰台に、今夏のリオ五輪で返り咲いたシンクロ日本。この選考会は、彼女たちがさらに上を目指し、20年東京五輪に向けて始動するための第一歩だ。メダリストとなった五輪代表選手は、リオ五輪本番に向けて追い込んだグアム合宿での日焼けがいまだに残る浅黒い肌をしている。それは、井村雅代ヘッドコーチに鍛えられ、厳しい練習を積んできたことの証明でもあった。

 リオ五輪で獲得した銅メダルよりさらに上を目指すため、今回は「非常に変則的な選考、初めての試み」(井村コーチ)という形式で代表選考が行われた。第一次選考で選ばれた選手は15人。10日に行われた課題「グループ泳ぎ」を審判が採点した結果に、最終選考前の合宿におけるコーチ陣の評価を「コーチ合宿評価」と点数化して加算。さらに従来通り身長減点をした結果で12人を選ぶ方式だ。今回特別に行われたのは「コーチ合宿評価」。井村コーチは、「そこがシンクロの難しいところで、選考会だけでは計り知れないものがある」と言う。

「審判が一回(の選考会)で見たものも事実。でも私たち(コーチ)がずっと合宿の中で見ていて『この選手はいざという時に、本当に日本の力になってくれるか』ということは私たちの方が知っています。私は今の段階では、コーチたちが見えているものが正しいと思う」

不足している大型選手

 リオ五輪で日本のエース・乾友紀子(井村シンクロクラブ)と組んだデュエットにおいてメダルを獲得、東京五輪でも活躍が期待されていた三井梨紗子(東京シンクロクラブ)は、引退を表明している。それに加えて吉田胡桃(井村シンクロクラブ)、箱山愛香(長野シンクロクラブ)も現役を退き、3人の大型選手を欠くことになった日本代表。その穴を埋めることが今の課題であることは、日本の大型化の必要性を強調する井村コーチ自身が語っている。

「今回は小型の選手、身長の低い選手が多いので、これから東京に向けてどう育てるかという課題をもらっていますね。大型の選手で(新しく代表に)上がってきたのは阿久津(咲子/東京シンクロクラブ)と福村(寿華/井村シンクロクラブ)だけですから。3名の大型の選手が辞めて、2名が上がってきた。どう見ても、そういう計算になります」

 要するに大型の選手が足りなくなっているということ。そこで問題なのがリフトの土台だ。長年日本の弱点とされてきたリフトを行う際、水中で下から支えてジャンパーを跳ばせる役割を果たす選手には、体格の大きさが必要になる。新戦力の大型選手、福村と阿久津はその土台となるべく、早急に鍛えられることになる。井村コーチは「彼女たちが(代表に)入ってから、バンバン(チームの)中に入れて使っている」と言う。

「2人ともすっときれいに痩せたでしょ。やっぱり緊張もありますし、ここ何日間でシュッと絞れて脂肪がなくなりました。彼女たちは鍛えれば役に立つ。今は五輪選手の乾たちと泳ぐことですごく緊張していますし、いい感じじゃないですか。足りないところだらけですけど、下手を育てるのがコーチの仕事ですから」

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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