バルサとレアルが抱える戦術的課題 失われた機能美、強まる個人への依存傾向

ビッグクラブが機能性を確立するのは困難

レアル・マドリーもドルトムント戦ではチームとしての機能性を欠いた 【写真:アフロ】

 レアル・マドリーについては、選手たちに自由を与え、ラファエル・ベニテス前監督の下で迷走していたチームを復調に導いたジネディーヌ・ジダン監督の人心掌握術、選手たちに対するメンタルコントロール、的を得た選手交代やシステム変更を可能にする洞察力などは評価すべき要素だと言える。

 だがチャンピオンズリーグで対戦したボルシア・ドルトムントのように組織力の高い強豪の前では、個の力だけでは通用しない状況が生じ得る。そして先週末にバルセロナが露呈したように、レアル・マドリーもまだそのような状況下で必要となるチームとしての機能性を確立できていない。

 とはいえ、これはバルセロナとレアル・マドリーだけが抱える課題ではない。グアルディオラが率いた08〜12年のバルセロナや13〜16年のバイエルン・ミュンヘンを除き、チームとして高い機能性を確立することは世界中のビッグクラブにとって困難な課題となっているからだ。現在で言えば、それを成し得ているのはディエゴ・シメオネのアトレティコ・マドリーやベリーソのセルタ、マウリシオ・ポチェッティーノのトッテナム・ホットスパー、トーマス・トゥヘルのドルトムントくらいしかない。

 世界中のメディアやファンの注目が集まる現状、ビッグクラブではチーム作りにかけられる時間が十分に与えられなくなった。しかも選手たちは過剰なまでの不安とプレッシャーにさらされながらのプレーを強いられている。

 そんな中、アトレティコは5シーズン以上もシメオネの指揮下で継続してチームを熟成させてきた結果、レアル・マドリーやバルセロナと肩を並べるまでに力をつけてきた。

 しかし、ここであらためて問い掛けたい。トップレベルのスター選手を擁していないチームに可能ならば、なぜ世界最高の選手たちをそろえたビッグクラブに同じことができないのか。普通に考えて、彼らは日々のトレーニングで準備されたプレーを並の選手より容易に実行できる能力があるはずだというのに。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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