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本田と長友が出場機会を取り戻す鍵は?
苦しいシーズン開幕を迎えたミラノの2人

チーム内での序列が「格下げ」された2人

本田圭佑は今季ここまで、リーグ戦7試合すべてで先発メンバーから外れ、途中出場もわずか2試合にとどまっている
本田圭佑は今季ここまで、リーグ戦7試合すべてで先発メンバーから外れ、途中出場もわずか2試合にとどまっている【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 イタリア・ミラノの地でプレーする日本代表の主力2人が、出場機会を得られずに苦しんでいる。


 ACミランの本田圭佑は、ここまでのセリエAの7試合すべてで先発メンバーから外れ、途中出場もわずか2試合のみ。9月末時点での通算プレー時間はわずか19分だ。インテルの長友佑都も、セリエA開幕戦にスタメン出場して90分間プレーしたものの、その後はヨーロッパリーグ(EL)で1試合(スタメン)、セリエAで1試合(後半17分に途中出場)ピッチに立っただけで、他の試合はすべてベンチや観客席から眺めることになった。通算プレー時間は208分と本田よりは多いが、それでも全体の25%にすぎない。


 本田も長友も昨シーズンは半分以上の試合でスタメン出場を果たし、レギュラークラスとしての地位を保っていた。それと比べれば今シーズンはチーム内での序列が明らかに「格下げ」された格好である。以下、それぞれの置かれている状況を整理し、今後の見通しについて考察していこう。


 本田の現状については、セリエA第7節サッスオーロ戦(現地時間10月2日、4−3)の前日会見でビンチェンツォ・モンテッラ監督が語った言葉を引用するのが、最も分かりやすいだろう。


「本田はスソと競合する立場にあるが、今のところ私は彼(本田)ではない方を起用することを選択している。本田は4−3−3や4−4−2の右アウトサイドでプレーできる選手だが、左サイドでも同じようにプレーできるかどうか知りたいと考えている。今それを試しているところだ」

現時点での指揮官の評価はスソが上回る

昨シーズンの本田がミハイロビッチ監督にレギュラーとして評価されたが……
昨シーズンの本田がミハイロビッチ監督にレギュラーとして評価されたが……【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 今シーズンからミランの指揮を執るモンテッラは、イタリアの監督としてはめずらしく、ポゼッションで主導権を握って戦う攻撃的なスタイルを好んでいる。シーズン序盤で、まずはチームの基盤を固める時期ということもあり、開幕から現在までの7試合はメンバーをほぼ固定して戦ってきた。基本となっている4−3−3システムで右ウイングのポジションに起用されているのは本田と同じ左利きながら、よりテクニカルで攻撃的なプレースタイルを持つ23歳のスペイン人・スソだ。


 本田はミランに移籍した2014年1月以来、13−14シーズン後半はクラレンス・セードルフ監督の4−2−3−1、14−15シーズンはフィリッポ・インザーギ監督の4−3−3、昨シーズンはシニシャ・ミハイロビッチ監督の4−4−2とシステムこそ違えども、右サイドの攻撃的ポジションで、ほぼコンスタントにレギュラーとしてプレーしてきた。にもかかわらず、今シーズンは控えの座に甘んじているのはなぜだろうか。


 最も大きな理由として考えられるのは、監督の戦術と本田自身のプレーヤーとしての特徴・プレースタイルのミスマッチだ。


 同じ4−3−3でもインザーギは3トップの両翼に本田(右)、ジャコモ・ボナベントゥーラ(左)という、攻撃だけでなく、守備においても計算の立つMFを起用して、実質4−5−1と言った方がいい布陣を敷いていた。これが、攻撃力を高めるよりも攻守のバランスを確保することを優先した結果だったことは明らかだ。


 得点するよりも、まず失点のリスクを減らそうというアプローチは、昨シーズンのミハイロビッチも同様だった。試行錯誤の末に落ち着いた最終形態は、本田とボナベントゥーラを両翼に配しながら、チーム全体の重心を低く設定して守備を安定させ、攻撃はもっぱらカルロス・バッカ、エムバイェ・ニアングという2トップによるカウンターアタックに頼るという4−4−2だった。


 6月に寄稿したシーズン総括でも触れたとおり、昨シーズンの本田がミハイロビッチ監督にレギュラーとして重用され評価されたのは、攻撃の最終局面で違いを作り出すアタッカーとしてのクオリティーではなく、攻守両面でハードワークし、チームに攻守のバランスを保証する「脇役」「一兵卒」としての献身的な貢献だった。攻撃力はより高いが守備面での貢献度に難点があるチェルチ、ボアテングとのポジション争いを制した理由もそこにあった。

 しかし、モンテッラは過去3シーズンを通して左サイドの攻撃的ポジションでプレーしてきたボナベントゥーラを1列低い中盤に下げ、左ウイングには純粋なFWであるニアングを起用するなど、より攻撃的な布陣をピッチに送り出している。インザーギの4−3−3が実質4−5−1だったのに対して、こちらは純粋な4−3−3。当然ながら、右ウイングに求められるクオリティーやプレースタイルも異なってくる。


 モンテッラが4−3−3の右ウイングに対して求めるのは、何よりもまず攻撃力、とりわけチャンスメークからフィニッシュに至る最終局面で違いを作り出すクオリティーだ。その点に関しては本田よりもスソが上回っているというのが、現時点における指揮官の評価だということになる。

「本田を左サイドで起用できるかどうか試している」

モンテッラ監督(写真)が4−3−3の右ウイングに対して求めるのは、何よりもまず攻撃力
モンテッラ監督(写真)が4−3−3の右ウイングに対して求めるのは、何よりもまず攻撃力【写真:ロイター/アフロ】

 15年1月にリバプールから移籍してきたスソは、柔らかいボールコントロールに代表される優れたテクニックと攻撃センスを備えていた。しかし、好不調のムラがあり、プレーに安定感を欠く上、守備面での貢献度が低いサイドアタッカーだった。実際インザーギは4−3−3の右ウイングという同じポジションで、スソよりも本田を評価してレギュラーに据えていた。


 ミハイロビッチが監督に就任した昨シーズンも前半戦はほとんど出場機会がなく、冬のマーケットでジェノアにレンタル移籍を強いられた。しかしそこでコンスタントな出場機会を得ると、シーズン後半の19試合で6得点2アシストという活躍を見せて覚醒。ミランに戻った今シーズンも、そのプレーを評価するモンテッラがプレシーズンキャンプからレギュラーとして扱い現在に至るという経緯である。


 ここまでの7試合で絶対的な信頼を寄せ右ウイングに起用し続けているという事実は、モンテッラがスソをチームにとって不可欠なキープレーヤーの1人と考えていることを示すものだ。実際、ピッチ上でのパフォーマンスもその期待に十分応える説得力を持っている。もしそうであるとすれば、本田がスソから右ウイングのポジションを奪うのはきわめて困難だと言わざるを得ない。


 モンテッラが会見の中で「本田を左サイドで起用できるかどうか試している」とコメントしているのも、本田の持つクオリティーを別のポジションで生かせないかと考えている証しだ。スソが絶対的な地位を固めた右ウイングに対し、左ウイングはニアングのパフォーマンスにややムラがあり、先のサッスオーロ戦ではルイス・アドリアーノがスタメン起用されるなど、まだ競合に割り込む余地が残っている。当面のところ、本田が出場機会を取り戻すための鍵は、右ではなくむしろ左サイドでのプレーにあるのかもしれない。

片野道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。2017年末の『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』(河出書房新社)に続き、この6月に新刊『モダンサッカーの教科書』(レナート・バルディとの共著/ソル・メディア)が発売。

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