マリナーズ、プレーオフ進出へ奮闘中 絶望的な状況から9月に巻き返す

丹羽政善

存在感を発揮している青木

マイナー落ちも経験したが、9月は3割を超える打率を残している青木 【Getty Images】

 一方、オフェンスでは、マイナーから戻って来た青木宣親が存在感を示し、9月は28日現在、打率3割4分5厘、出塁率4割6厘である。おそらくチームにしてみれば、こういう展開を予想していなかったのではないか。というのも、青木は9月6日にマイナーから戻って来たが、3試合連続でスタメンから外れ、出場機会は代打の1打席のみ。チームとしては、プレーオフの望みが薄くなったことから、来季に向けて若いベン・ギャメル、ギレルモ・エレディアらを起用し始めていた。今オフにフリーエージェントとなる青木は、来季の構想に入っていないようにも映った。

 ところが、「気持ちだけは折れないように」と、あのとき自分に言い聞かせるように話していた青木は、9日にスタメンで出場すると今季第2号の本塁打を放ち、翌日の試合では猛打賞。その後もヒットが続くと、チームもプレーオフ争いに復帰。スコット・サービス監督は若い選手を試すのを諦め、状態のいい青木を使うようになった。青木は、自らチャンスを引き寄せたのだ。

 その後、9月中盤まで湿りがちだったロビンソン・カノとネルソン・クルーズのバットも終盤に入ってチームを支えた。26日の試合では、9回に追いつかれ嫌な雰囲気だったが、延長11回表、カノが決勝本塁打を放ち、プレーオフに望みを繋いだ。

 ワイルドカード争いは28日終了時点でブルージェイズがトップ。2位がオリオールズ。3位がタイガースで、オリオールズまで1ゲーム差。マリナーズはオリオールズまで2ゲーム差の4位。ワイルドカードは事実上、この4チームの争いだ。

 残りは4試合。マリナーズが全勝しても、オリオールズとタイガースが負けなければ逆転できないが、一縷の望みを残し、29日からホームにアスレチックスを迎える。岩隈は10月1日に登板予定。最終戦ではフェルナンデスがマウンドに上がる。彼にはまだ、雪辱の機会が残されているのかどうか――。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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