清武を評価するモンチの眼力と“錬金術” セビージャで最も重要な人物はSD
「清武のテクニックは一級品」
モンチのおかげで財布に余裕ができたセビージャだが、モンチはシビアな金銭感覚の持ち主で、相場より高い買い物は絶対にしない。今年清武を獲ったのも、ハノーファーの2部降格によって適正な価格(移籍金650万ユーロ=約7億5000万円)になった、と判断したからだ。
そのモンチは清武について2度発言している。1度目は7月5日(現地時間)の入団会見時で、われわれ記者との間に以下のようなやり取りがあった。
――清武のどこが一番の魅力か?
「清武を獲るときに決め手となったのは、局面の打開力と素晴らしいキック力、グラウンド上でパーソナリティーを出せること、個人技もあり、キープ力もあるという点だ。トップ下でも菱形の中盤でもサイドでもプレーでき、テクニックは一級品だ」
――日本人選手はリーガで成功していないし、言葉もまったく違い、サッカーにも生活にも適応するのに苦労する。獲得する時にそんなことは考えなかったか?
「言葉がまったく違うのは今(入団会見で)、気がついたよ(笑)。清武は日本からダイレクトにセビージャに来たわけではない。ドイツに4年間、ニュルンベルクとハノーファーにいた。すでに欧州を経験しているわけだ。私は活躍してくれると信じている。
素晴らしいテクニシャンだし、サッカーのグラウンド上で話される“言葉”は国際語だ。中レベルの英語力もある。スペイン語はできなくても、グラウンド上でのコミュニケーションができるようにサポートしたいと思っている。言葉を交わしたところ、彼は頭も良い。言葉が障害になるのは確かだが、ドイツでの経験と英語で何とか最初はやっていけると思う。シーズンに入ったら、なるべく早くスペイン語を習得できるよう全力でサポートしたい」
清武の適応のスムーズさに一安心
「清武の問題は日本人であることだ、と常に考えていた。エキゾチックに聞こえるし、言葉の壁もある。しかし最初の瞬間から、彼は適応のために最大限の努力をしてくれた。彼のプレーは自分の目で確かめたから、サッカー的には疑問はなかった。適応は選手にとって難問なのだが、思ったより時間がかからなかった。サッカー選手として活躍するには、まず人として生活になじめることが大前提だ」
実際、モンチは清武の適応については頭を悩ませていたようで、人を介して相談を持ち掛けられたこともあった。ドイツ人のマルコ・マリン(13−14)、ルーマニア人のラウル・ルセスク(13−15)、ウクライナ人のイェフヘン・コノプリャンカ(15−16)ら言葉の壁に苦しみ期待外れに終わった“エキゾチック”なタレントたちのことが頭をよぎったに違いない。
ただ、シーズンが始まった後にモンチと話した時には、清武の適応のスムーズさに一安心している様子だった。監督交代に、11人の獲得と15人の放出、自身の進退問題もあった大変な夏の疲れが癒えた時にでも、また清武のことを聞いてみたい。