イチロー超えを狙ったボガーツは失速 シーズン262安打は異次元の記録

丹羽政善

後半3カ月で150安打は困難

今季、3年連続200安打を狙うアルトゥーベだが、10年連続は「イメージできない」と語る 【Getty Images】

 さて、『csnne.com』には、イチローが04年前半は苦しんでいた――という指摘はなかったが、74試合の時点での話に戻すなら、ボガーツが全速力で走っているのに対し、イチローは回り道をしながら、それでいてボガーツの真後ろにピタリとつけていた、という感じではないか。イチローが仕掛けた75試合目以降のスパートに、ボガーツは全くついていけなかった。

 ちなみに今季、通算安打でリードしているのは192安打のアルトゥーベ。打ちまくっている印象があるが、それでも予想安打数は217安打だ。262安打には45本も及ばない。超えるとしたら、あと1カ月、あと100打席以上は必要だ。見方を考えれば、そこにもイチローの記録のすさまじさが透ける。「今後も抜かれることはない」とパウエルが断言するわけである。

 おそらく今後も、前半の段階ではイチローの04年の安打ペースを上回る選手はいくらでも出てくるのではないか。ただ、後半の3カ月で150本以上のヒットを打てる選手が現れるとは、想像しがたい。

10年連続200安打は「イメージできない」

 なお、パウエルコーチは、「年間最多安打記録同様、10年連続200安打の記録も不滅ではないか」と話した。

 通算安打でトップを走っているアルトゥーベが今季も達成すると3年連続となる。非凡な記録ではあるが、イチローの連続記録に挑戦する前に、ポール・ワーナーの4年連続(1927〜30年)、マイケル・ヤングの5年連続(2003〜07年)といった記録があり、まだまだ先の話。アルトゥーベ自身、3年前に初めて200安打を超えたとき、こう言っていた。
 
「この数字は目標にできる数字ではない。ちょっとしたケガをしただけで、記録は途絶える。それをイチローが10年も連続で記録したなんて……。1年だけなら、多くの選手にチャンスがあるけど、不可抗力まで排除して10年も続けるなんて、イメージできない」
 彼は昨年、最終戦に3安打を放って、200安打ちょうどとしたが、改めて連続で200安打を打ち続けることの難しさを実感したのではないか。そしてまた、イチローの記録の偉大さをも。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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