なぜか順調なリオパラのチケット販売 五輪が愛国心に火を付けた

サンパウロ新聞

「取らぬ狸の皮算用」に小売商はがっかり

五輪では大会後半にバレー、サッカーなどで金メダルを獲得したブラジルだったが、グッズ関連の売上は思いの外伸びなかった 【Getty Images】

 日本時間8日からリオデジャネイロパラリンピックが開幕する。五輪が閉幕した8月22日以降、リオは警備陣も五輪時の3分の1程度に減り、世界各国から押しかけたマスコミ陣は大半が帰国した。

 リオ市民は「平常に戻ったけど、五輪効果はあまりなかったのではないか」と振り返る。リオ市内の小売業者500社を対象にした調査では五輪期間中に5%の売上増を見込んでいたが、調査によると、2%減と散々な結果に終わっている。売れたのは五輪関係のシャツ類、帽子、サンバイザー、バンダナ、カラフルなメガネなどで1人当たりの平均購入額はわずか3000円だったという。

 ブラジルのマスコミも五輪終了後、ジルマ・ロセフ大統領の弾劾裁判一色となった。8月31日にはブラジル上院でロセフ大統領の罷免が決まり、相前後してリオをはじめサンパウロなど各地で連日ロセフ氏を擁護する団体が大規模なデモを繰り広げ、パラリンピック開催が吹っ飛んでしまった感が強い。

資金不足で相次ぐ計画変更

リオ市内には、五輪に代わってパラリンピックのエンブレムが設置された 【Getty Images】

 1日から5日までは、国内5都市でパラリンピック聖火リレーが行われた。リレーは総勢745人という小規模なもので、テレビなどにほとんど取り上げられることはなかった。マスコミで取り上げられるパラリンピック関連のニュースといえば、資金不足で計画が変更されたことや職員削減、イベント中止といったマイナスイメージのものばかりだ。

 リオ2016の組織委員会は、8月31日、資金不足を理由に1900人の臨時従業員の解雇をはじめ、競技場で開催する予定だったイベントをキャンセルし、スポーツ関連のプログラムの変更を余儀なくされた。五輪時には5500人雇用した臨時従業員が3600人に減らされるも、組織委員会は「五輪の経験から従業員を減らしてもパラリンピックへの影響はない」と断言している。

 五輪でラグビー、女子バスケットボール、ホッケー、乗馬などの競技が開催されたデオドロ地区に設置されたアレーナ・ジュベントゥーデで、パラリンピックの競技が取りやめとなった。このため、同競技場で開催予定だった車いすフェンシングは別会場に移され、同施設内の公園で予定されていた大型スクリーンの設置や音楽イベントなどが中止となっている。

 チケット販売の伸び悩みに加えスポンサーが思うように集まらず資金不足に陥ったリオ2016組織委員会は、ブラジル連邦政府やリオ市役所に対して約85億円の支援を求めている。しかし五輪時でも支援がなかなか得られなかったことを考えるとまだまだ、いろいろな面で削減が行われるものとみられている。

 特に、五輪では一番大きな問題だった治安面で予想以上に成果をあげたことから、警備陣を減らしても治安が保てると判断しているようだが、組織委員会が考えるように大きな事故や事件が起こらないという保証はない。

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著者プロフィール

1946年に創刊したブラジル・サンパウロの邦字新聞(週5回発行)。日刊の邦字新聞としては海外最大規模を誇る。日系社会の言論界をリードし、さらには文化事業で日本との架け橋を担う。

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