手ごたえのケンブリッジ 山縣は安堵 男子100予選レース後に見せた表情

平野貴也

男子100メートル予選を突破したケンブリッジ飛鳥 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 日本の3選手は、予選で明暗が分かれた。準決勝に向けて、最も充実した走りを見せたのは、日本選手権の覇者、ケンブリッジ飛鳥(ドーム)だった。

 リオデジャネイロ五輪の陸上競技、男子100メートル予選が現地時間13日に行われ、ケンブリッジと山縣亮太(セイコー)が準決勝進出を決めたが、桐生祥秀(東洋大)は敗退した。レース後の取材エリアでは、明るい笑顔で順調ぶりをアピールしたケンブリッジ、悔しさを内に秘めて清々しく話した桐生、安堵(あんど)感でいっぱいの山縣と三者三様の表情を見せた。

 男子100メートルの予選は、8組に分かれて行われ、各組上位2名が準決勝に進出する。加えて、各組上位2名を除く全体のタイム順で上位8名が準決勝に進出できる仕組みとなっている。ケンブリッジと山縣は、それぞれ第4組と第8組の2位で予選を突破した。桐生は世界記録保持者で五輪3連覇を狙うウサイン・ボルト(ジャマイカ)と同じ第7組を走って4着。タイムは、10秒23でボーダーラインとなった10秒19を惜しくも超えられなかった。

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ケンブリッジ「イメージ通りの走り」

初五輪の最初のレースで手ごたえをつかんだ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 抜群の手ごたえを示したのは、日本勢の先陣として第4組を走ったケンブリッジだった。

 初めて挑む五輪という大舞台が楽しみで、予定より早く朝5時には起きてしまったという日本王者は、勢い良くスタートで飛び出すと、鮮やかに加速。大外の第9レーンで抜け出し、最後は内側のレーンを見ながらゴールする余裕を見せて2位に入った。自己ベストの10秒10には及ばなかったが、10秒13の好タイム。「イメージ通りに、しっかりと走れた。速い(選手が多い組だ)なと思ったけど、自分も調子が良かったので、チャンスはあるかなと思った。普通に前向きに走れた。最後は、他のレーンが遠かったのでどうかなと思ったけど、掲示板を見て良かったと思った」と笑顔を見せた。

 中盤以降は少し力んだかもしれないと話したが「今シーズンが一番調子も良いかなと思っている。気持ちも上がっているので」と課題が気にならないほどの充実ぶり。今シーズンにケンブリッジの自己ベストである10秒10を上回るタイムを出した選手が4人もいるという厳しい組で勝つ自信があったと言うだけあって、手ごたえは上々だ。準決勝でタイムを伸ばしてくる可能性は、十分にある。

4年前を思い出した山縣

山縣は安堵の表情を見せた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 もう1人、準決勝進出を決めたのは、山縣だった。4年前のロンドン五輪で10秒07の好タイムをマークして準決勝に進出。そのときから、決勝進出を本気で目指してきただけに「4年前のことを思い出して『帰ってきたよ、また、ここに』と独り言をつぶやいていた」とスタート前には感慨にふけっていた。

 最終第8組でのレースは、予選通過に必要なタイムが明白だ。着順以外では、10秒19以上が必要という状況でレースに向かった。レースは、得意のスタートで先頭を奪って終盤までリード。向かい風1.3メートルと他の組に比べて最も悪い条件でも急失速することなく、終盤に差し込まれても2着をキープした。レースを振り返った山縣は「中盤で前(先頭)に出ているのが分かった時点で、ちょっと力が抜けたような気がしたので修正したい。予選の走りの修正をして、手ごたえは自信にして、準決勝ではタイムを縮めていきたい」と準決勝に向けて課題を挙げた。

 レース運びは悪くなかったが、タイムは全体の22位タイとなる10秒20。着順が3位であれば予選落ちとなっていただけに、同じ予選突破という結果でもケンブリッジとは違い、その顔に浮かんでいたのは充実感ではなく、安堵感だった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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