イチロー、本拠地で偉業達成ならず ルーティンの変化は何を意味する?

丹羽政善

「スタメンで使えばいい」という声も

7回のファーストフライの後、折れたバットを手にするイチロー 【写真は共同】

 それに対しては、ある米記者がこう指摘した。
 
「2本になったのだから、ずっとスタメンで使えばいい。これだけ不規則な起用だと、イチローもリズムをつかめない。さらに、こうして長引くことで、チームにとって迷惑になる可能性もある。人の出入りが激しいから、それがストレスになる恐れがあるのだ。打たせてしまえばいい。そうすれば、プレーオフ争いに専念できる」

 その考えは理解できる。

 今の起用法では、なかなかリズムをつかむのが難しい。また、メディアが増えていることをチームメートはどう感じているか。

 イチロー自身が、それに対して考えるところがあるのかもしれない。

 30日、マーリンズは打撃練習を中止した。連戦の疲れを考慮した結果で、野手の集合時間は午後4時と遅かった。

 通常、こういう場合イチローは1人でグラウンドに出て、キャッチボール、ダッシュなどで軽く汗をかく。そのルーティンを知るメディアは、ダグアウトの前で今か今かと、イチローが出てくるのを待ち構えていたわけだが、出てこなかった。

 今日は午後1時10分開始のデーゲーム。やはり通常なら午前11時半前から体を動かすが、その時間になってもクラブハウスでスリッパを履いたまま。まったく外に行くそぶりがなく、結局、外に姿を見せることはなかった。

敵地でのカブス戦で達成か?

 過去、同じようなことがあった。2008年7月29日、イチローは日米通算3000安打を記録したが、その前にもメディアの数が増え、イチローは外での練習を控えている。そのとき、プレッシャーとの付き合い方に関連してこう答えた。
 
「普段見ない顔がここにも何人かいますけど、普段なら外で練習するものをしなかったりという、それは僕にとって必要なことだったのでやったんですけど。だから、それまでの経験によるテクニックになったかどうかは、ちょっとわからない。でも、そういうことをしましたよね」

 デーゲームのときに外で練習をするのは彼にとって長年のルーティンだが、逆に今は多くの視線が気になって、ルーティンを崩されるのかもしれない。

 いずれにしても、記録は敵地で行われるカブス戦以降に持ち越された。

 順当に考えれば、第3戦のカブス先発は、過去イチローが最も対戦し、最多の37安打を放っているジョン・ラッキーなので、この日(現地8月3日)にスタメン出場ということが考えられる。

 もっとも、その前に2試合。そこで3000安打に達している可能性も十分にある。

2/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント