奇跡の逆転V目指す栗山ファイターズ 21勝2敗の要因と今後の課題
15連勝の陰に栗山采配
7月8日のロッテ戦で2打席連続本塁打を放つなど打撃開眼の大野 【写真は共同】
加えて、捕手・大野奨太の打撃開眼も大きい。昨季は74試合に出場して打率1割9分4厘、本塁打0本だった男が、今季は打率2割5分3厘で5本塁打。市川友也との併用が続くなか、7月8日のロッテ戦で2打席連発弾をマークするなど、6月19日以降の出場13試合で打率3割5分3厘と、リード面だけでなくバッティングでも勝利に大きく貢献した。
さらに投手陣では高梨裕稔が成長。7月1日の首位攻防初戦に先発すると、力強い直球とタテのカーブでホークス打線を手玉に取って7回5安打無失点。以降も先発ローテとして結果を残している。
重盗でホームスチールを成功させるなど栗山監督の“奇襲”が光った 【写真は共同】
終盤戦へ武田久の復活に期待
元セーブ王の武田久が2年ぶりに1軍昇格。やや安定感を欠く中継ぎ陣に頼もしい右腕が帰ってきた 【写真は共同】
だが、現在のチームが抱えている唯一の悩みが、そこになる。ここまで谷元圭介(35試合、防御率3.18)、宮西尚生(34試合、防御率1.37)、マーティン(40試合、防御率1.43)と名前は挙がるが、昨季球団記録に並ぶ39セーブをマークした守護神・増井浩俊が21試合で防御率6.30の絶不調。先発への配置転換で“再生”を図るが、それが叶ったとしてもリリーフ陣にとっては大事な駒が抜けたことになる。
理想を言えば谷元はロングリリーフやビハインド時も合わせて万能的に、宮西は左キラーとして起用したい。そうなると、7回と8回の6つのアウトを計算できる投手の台頭が待たれる。現在は新外国人のバース(22試合、防御率3.71)が担っているが、本来そこで働くべき鍵谷陽平(24試合、防御率4.57)や白村明弘(9試合、防御率7.27)の出来が今一つ。そこで期待されるのが、7月22日に2年ぶりに1軍昇格を果たした元セーブ王の武田久だ。勤続疲労から2度の手術を強いられたが、今季はイースタン・リーグ14試合に登板して防御率1.88と復調気配。これを追い風に新たな“鉄板リレー”が完成すれば、残りの「4.5」差をひっくり返す可能性は十分にある。
昨季のファン感謝デーでの締めの挨拶で、栗山監督は「てっぺん目指します!」と高らかに宣言した。一度は雲の上に隠れて見えなくなった頂上だが、今はハッキリと視界に捉えている。勝負の8月、そして9月――。球団記録の15連勝を無駄にしないためにも、さらなる“快進撃”を期待したい。
(八幡淳/ベースボール・タイムズ)