日本ハムが3年連続盗塁王を輩出した理由 環境、メンバー構成、そして伝統――

ベースボール・タイムズ

昨年チームでは3年連続、自身初の盗塁王を獲得し、今季もリーグ3位の10盗塁を決めている中島 【写真は共同】

 陽岱鋼、西川遥輝、中島卓也……。2リーグ制になって初めて、3年連続同一球団から異なる3人の盗塁王が誕生した。その球団こそ、北海道日本ハムファイターズである。その理由とは?

札幌移転が転機に

 今や「日本ハム=盗塁」という印象を持っているファンも多くなったことだろう。だが、意外にも13年に陽岱鋼が盗塁王を獲得するまで12球団で唯一、盗塁王を輩出していなかった球団が、日本ハムだった。そのチームが、なぜ変わったのか…。まず第一に、環境の変化がある。

 もともと、日本ハムには身体能力の高い選手はそろっていた。これは2004年の北海道移転とともに広くなった本拠地球場・札幌ドームが大きく関係する。両翼、中堅のサイズこそ東京ドームと変わらないものの、高くなった外野フェンス(東京D:4メートル、札幌D:5.75メートル)と、広くなった左右中間(東京D:110メートル、札幌D:116メートル)によって、広範囲をカバーする外野守備力が必要となった。これまでを振り返っても、新庄剛志、森本稀哲、糸井嘉男、陽岱鋼と、突出した身体能力を持つ選手が外野を守ってきた。

 レギュラーになるためには、広い札幌ドームを苦にしない高い守備力が必要になる。その事実は、ドラフト指名でも「守備力重視」の傾向を強くした。近年の日本ハムのドラフト戦略は「1位指名はその年の一番優れた選手」と単純明快だが、下位では将来性のある高校生野手を積極的に指名。起用法が限られる長距離打者タイプよりも、「走・攻・守」三拍子そろった好素材を指名し、複数のポジションを守らせながら戦力に育て上げている。

戦力流出による若返り

 ドラフト戦略と同時に、12年以降に相次いだチーム内の戦力流出も、「盗塁」という戦術を積極採用する大きな理由の一つになった。

 まずは糸井嘉男のオリックス移籍。野手転向後に「トリプルスリーに一番近い男」と言われた男が去り、不動のレギュラーであった田中賢介が12年オフにメジャーへと旅立った。さらに14年オフには、チームの顔でもあった稲葉篤紀、金子誠のベテランコンビが引退。小谷野栄一、大引啓次もFAで他球団へと移籍。15年のシーズン開幕戦、日本ハムのスタメン出場選手の平均年齢は12球団で最も若い「25.3歳」となったのだ。

 歴代の盗塁王のほとんどが20代でタイトルを獲得しているように、スピードは若い選手の最大の武器といえる。その“若さ”が「脚力」を生かした戦術、つまり「盗塁」を推し進め、12年に「82」だったチーム総盗塁数が、13年には「120」へと増加し、14年「134」、15年「134」と、3年連続で12球団トップの盗塁数を記録。その間、聖澤諒(東北楽天)や本多雄一(福岡ソフトバンク)などの他球団のライバルたちが数字を落としたことも追い風となり、陽岱鋼、西川遥輝、中島卓也と3年連続での盗塁王が誕生した。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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