2年目の変化と成長、そして覚悟――日本ハム・有原航平が目指すエースへの道

ベースボール・タイムズ

防御率4.79から防御率2.22へ

開幕から5連勝を飾るなどプロ2年目にして日本ハムの先発として存在感を発揮している有原 【写真は共同】

 球団として29年ぶりとなるアメリカでの春季キャンプを実施した北海道日本ハム。地元・北海道のテレビ各局は、担当アナウンサーと所属解説者を送り込み、現地から連日詳細を報道した。そして、ブルペンを見た解説陣から異口同音に出た言葉が、「今年の有原はすごい」だった。

 迎えた3月27日、開幕3戦目となる千葉ロッテ戦の先発マウンドを任された有原航平は、その膨らんだ期待を結果として示す。初回、先頭の岡田幸文にヒットを許したが、続く高濱卓也を注文通りのセカンドゴロ併殺に打ち取ると、その後もテンポ良く凡打の山を築き、8回98球を投げて6安打無失点の好投で1対0の勝利に貢献。開幕戦を大谷翔平で落とし、“常盤グリーン”の特別ユニフォームで臨んだ2戦目も敗戦。チーム内に漂いかけた嫌なムードを、プロ2年目右腕が見事に吹き飛ばした形となった。

 続く登板2戦目、4月3日の福岡ソフトバンク戦でも8回7安打1失点で白星を飾った有原は、同26日の東北楽天戦では8回3安打1失点で3勝目。5月も10日のオリックス戦で8回途中5安打無失点、17日のソフトバンク戦では9回5安打2失点の完投劇で自身開幕5連勝を飾った。

 その後2連敗を喫し、6月7日の広島戦でも7回2失点ながら3敗目。8日現在で9試合に登板して5勝3敗・防御率2.22とやや数字は落としたが、昨季の成績(18試合で8勝6敗・防御率4.79)と比べると格段の進歩を遂げていることに疑いの余地はない。

カットボールでゴロアウト増

 今季の有原の投球には、ある特徴がみられる。それが奪三振数の減少である。昨季の奪三振率7.05に対し、今季は8日現在で5.22。その代わりに増加したのが、「ゴロアウト」の数だ。今季初登板で8回までの24個のアウトのうち16個のゴロアウト(併殺は2つとカウント)を奪うなど、ここまで登板9試合中5試合で2ケタのゴロアウトを記録している。

 恵まれた体格と150キロ超のストレートから、“剛腕”のイメージもある有原だが、元々入団時から本人が公言する通り、「打たせて取る」が自身のスタイルだ。その意味ではプロ1年目の昨季は不満の残る内容だった。特に目立ったのが「被本塁打13」。規定投球回未到達の投手で4番目に多い数字だった。ところが今季は、5月17日までの5連勝中、規定投球回到達投手の中でリーグ唯一の被本塁打0をキープした。

 いずれにしても、今季のゴロアウト増の要因は、ずばり「カットボール」にある。昨季は左打者の内角を攻めあぐねる場面が目立ち、被打率は右打者の2割6分5厘に対し、左打者は2割9分4厘と苦手にした。そこにメスを入れたのが、4年ぶりに日本ハムに復帰した吉井理人・投手コーチだった。春季キャンプで、左打者の内角へ食い込むカットボールの有効利用を有原に進言。その効果はてきめんで、5月17日のソフトバンク戦では柳田悠岐、中村晃、長谷川勇也といった左打者7人(代打1人を含む)を計20打数2安打に抑えながら、全打者から計27アウト中15個のゴロアウトを奪って完投勝利。ソフトバンク・バンデンハークの連勝記録を14で止めて見せた。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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