ボルト、五輪3冠への必須条件 不安払しょくも練習量の確保が鍵
「追試」で見せた復調の走り
ロンドンで開催されたダイヤモンドリーグの200メートルで今季世界5位となる19秒89で優勝したボルト。ジャマイカ選手権を棄権し周囲を心配させたが、納得の結果を見せた 【Getty Images】
「追試」と言葉を使ったのは理由がある。ボルトは7月初めに行われたジャマイカ選手権では100メートルの予選、準決勝に出場後、左大腿部に違和感を覚えて決勝を棄権。ジャマイカ陸連は「実績ある選手がけがで棄権した場合、医師の診断書を提出すれば救済される」という選考規定を設けており、それを申請し、200メートルも欠場した。救済措置のおかげでリオ五輪の代表には選ばれたものの、ジャマイカ陸連は「選手権で走っていない種目に関しては、リオ五輪の前にコンディション確認のために走らなければならない」と定めており、その規定にのっとり、今レースでは200メートルに出場した。
ボルトの出したタイム、19秒89はジャマイカ選手権の200メートルで優勝したヨハン・ブレークの20秒29を上回り、レースを見守っていたジャマイカ陸連の会長や理事たちも納得の結果となった。
露呈した走り込み不足
しかし、最低ラインをクリアしただけで、まだ走りもコンディションも100%ではない。ジャマイカ選手権から2週間後にドイツ人医師を訪ね、治療とリハビリを行った。無理をすれば再発の可能性もあり、足に大きく負担のかかる練習は避けてきたため、「スターティングブロックを使ったスタート練習は一度」しか行っていない。
また、レースで露呈したように走り込みも不足していた。スタートから加速部分はもたつきもあったが、地力の差でライバル選手を大きく引き離し、2位以下に体2つ以上あけて直線へ。しかし後半は体を大きく揺らし、必死に腕を振ってフィニッシュラインへ。無理矢理、体を動かしているようにも見えた。
ゴールすると、ボルトは眉間にシワを寄せ、肩で大きく息をしながらしゃがみ込んだ。ウイニングランをする気力すらないようだった。
「レースをうまくまとめられなかったけれど、でも今季初の200メートルでこれくらい走れたことは満足」
故障明けのレースで及第点を出せたこと、練習不足で後半少しバテたものの、足に違和感も出ず、まあまあのタイムで走れたことにホッとしているようだった。