バロンドールの選考基準をあらためて問う 投票者たちは何を重視するべきなのか?

比較検証すべき多くの候補者たち

年間を通した活躍で考えれば、C・ロナウド以外にも多くのバロンドール候補者がいる 【写真:ロイター/アフロ】

 ここでもう一度問い直したい。C・ロナウドはわずか2カ月の間にCLとユーロを制した。だが2つのビッグタイトルを獲得したというだけで、彼は本当にバロンドール受賞にふさわしいメリットを残したと言えるのだろうか。

 私はそうは思わない。それが世論に反する意見であることもよく分かっている。恐らくバロンドールの投票権を持つ監督、選手、記者たちの多くはC・ロナウドがトロフィーを掲げた2枚の写真を無視することはできないだろう。

 それでもわれわれは、バロンドールが得点数やタイトル獲得数を争うものではなく、その年のベストプレーヤーを選出する個人賞であることを忘れるべきではない。そしてそのことを念頭に置けば、C・ロナウドと比較検証すべき候補者は他に何人も出てくるはずだ。

固まっている評価を覆すのは難しい

ビダルはバイエルンとチリ代表で計3つのタイトルを獲得。多くの試合で重要な役割を果たした 【Bongarts/Getty Images】

 リーガ・エスパニョーラとCL、コパ・アメリカ・センテナリオで主役級の活躍を果たしたメッシはもちろん、ルイス・スアレスも代表では出場停止とけがのためほとんどプレーできなかったものの、バルセロナでの活躍は特筆すべきものだった。

 バイエルン・ミュンヘンのマヌエル・ノイアー、プレミアリーグを制したレスター・シティの若き守護神カスパー・シュマイケルらGKにスポットが当たる時が来たとしても不思議ではない。レスターのスター選手、ジェイミー・バーディーもあらゆるファンの期待を上回る活躍を見せた。

 バイエルンでブンデスリーガとドイツカップを制し、チリ代表としてコパ・アメリカ・センテナリオも勝ち取ったアルトゥーロ・ビダルも候補に加えるべきだ。とりわけ昨年に続いて連覇を果たしたコパ・アメリカでは高いパフォーマンスを維持し、多くの試合で重要な役割を果たしてきたという点で、彼はC・ロナウドを上回る功績を残している。

 シーズンを決めるのは1年の前半であり、後半ではない。ゆえにこれからバロンドールの投票期限までに、現時点で固まっている評価が覆ることはまずないだろう。何らかの予期せぬ事態が生じない限り、そのような状況が生じることはまず考え難い。

 チームタイトルなのか、個人タイトルなのか、それとも個人のパフォーマンスなのか。今年も結局は、投票者たちが何を重視するかによって受賞者が決まることになりそうだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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