サンウルブズ、1年目の総括 もがきながら戦って見えてきたもの
準備不足が響いたセットプレー
ラインアウトでは強豪国の高さに苦戦した 【写真:Haruhiko Otsuka/アフロ】
セットプレーも課題だった。スクラムは、専門コーチ不在により、ハメットHCとFW陣が話し合いながら、試行錯誤し、整備していった。シーズンが深まるにつれて、相手に応じて試合中に修正することができるようになり、最終的にはほかのチームに劣らず、成功率は92%だった。PR稲垣啓太、垣永真之介、唯一の大学生選手だった具智元ら若きPR陣には大きな財産となった
最終戦は良かったものの、ラインアウトは一番の課題だった。成功率76.8%はワーストで、唯一の70%台だった。38歳で夢の舞台に立った大野は「最初はフェイントを入れてずらして取ろうとしたが、トップリーグではそれで取れても、スーパーラグビーではカットされた。昨年、日本代表でやっていたようにテンポを上げて投げるようになったら確率が上がった」。準備不足、経験不足が響いた形となった。
SH茂野らが日本代表でも活躍
サンウルブズ、日本代表で印象的な活躍を見せた茂野 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
かつては無理と思われていた日本人のスーパーラグビー挑戦は、2013年にSH田中史朗(ハイランダーズ)が、その扉を開けたが、今年は実に26人が誕生した。また個々の選手を見ても、CTB立川は攻守にわたるプレーの精度、安定性が増し、リーダーとしてチームを鼓舞した。またPR稲垣は、ワールドクラスになれるポテンシャルを見せ、2年目のLO小瀧尚弘も十分に通用していた。またハメットHCが「トップリーグ(NZのITM杯)でプレーしていたから」と、自ら招集したSH茂野海人は、2019年の日本代表の中心選手となれる存在感を見せた。
6月の日本代表戦は、ハメットHC以下、サンウルブズの選手が中軸となった。アウェーでカナダに逆転勝ち、スコットランドには2連敗したが、2戦目は十分に勝てる内容だった。HO堀江主将が「サンウルブズの経験がプラスになっている。サンウルブズのメンバーはコンタクトで負けていなかった。(日本代表の)強化になっている」と言えば、LO大野も「第2戦でスコットランドに勝てるところまでいったのはサンウルブズの経験が生きているから」と捉えていた。
それでも、多くの選手はサンウルブズ、日本代表だけでなく、トップリーグと3つのカテゴリーを掛け持ちし、このまま2019年まで休みなく戦っていくのは困難であろう。日本代表選手はスーパーラグビーやトップリーグを数試合ずつ休ませたり、年間を通して試合数を制限したりするなど、選手たちの体と心のケアも必要であろう。
「ゼロからではなく、今年をベースに」
1年目の経験を生かして、来季のスタートを切ることが求められている 【斉藤健仁】
ただ13敗、カンファレンス、南アフリカグループ、そして全体でも最下位という現実は受け入れなければならない。2年目は南アフリカだけでなく、ニュージーランドの5チームと戦う。アルゼンチンへの遠征も待っている。相手もよりサンウルブズを分析し、今年よりも過酷なシーズンになることは間違いない。
HO堀江主将は「早くコーチ陣は決めてほしい。また2月の始動の前に、顔合わせをしてほしい」と改善点を挙げつつ、来シーズンに向けて「選手一人ひとりが、経験したことを次につなげるか。サンウルブズに関わった人たち、選手だけでなく、日本協会も運営サイドも、ゼロから(スタート)するのではなく、今年をベースに上に上がっていきたい」と締めくくった。
日本で開催されるワールドカップまで残り3年。日本協会や運営サイドは、選手にストレスを与えず、なるべくプレーしやすい環境作りと準備に注力し、選手はトップリーグで戦いながら、スーパーラグビーで通用するようスキル、フィジカルを上げつつ、来年に備えてほしい。そして、2年目のスーパーラグビーで、1年目より進化した姿を見せることが、2019年への近道であろう。2年目のサンウルブズは日本代表のヘッドコーチに内定しており、ハイランダーズで優勝経験もあるジェイミー・ジョセフ氏が自ら指揮を執ってほしいと願うばかりだ。