ブロック・レスナー、UFC復帰への想い「オレの中にファイターが生きている」

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「UFC 200」記念大会で再びUFCのリングに上がるブロック・レスナー 【Zuffa LLC】

 日本時間6月5日(日)に米国・ロサンゼルスで開催された「UFC 199」は、マイケル・ビスピン(英国)による悲願のベルト獲得、ドミニク・クルーズ(米国)とユライア・フェイバー(米国)のライバルストーリー最終章など、好勝負続出の充実の内容だったが、観客の興奮に油を注(そそ)いだのが、大会中に放映された「UFC 200」記念大会の告知VTRの最後に、「Can You See Me(オレが見えるか)」という声とともに映し出されたブロック・レスナー(米国)の姿だった。

 テレビ中継では解説のジョー・ローガンも「ええっ! ブロック・レスナーが参戦するのか? 聞いていない。誰と戦うのだろう」とファンと一緒になって驚いていたが、その翌日にレスナーは米スポーツ放送局「ESPN」のニュース番組『SportsCenter(スポーツセンター)』に出演し、対戦相手がマーク・ハント(ニュージーランド)であることを自ら明らかにしている。

1年前はオクタゴンを離れる決意を口にしていた

 思えばレスナーは15カ月前の昨年3月にも、ESPNの同じ番組に出演し、今回とは正反対の声明を出していた。当時の事情はこうだ。

 2011年12月30日(米国時間、以下同)に開催された「UFC 141」でアリスター・オーフレイム(オランダ)に敗戦を喫したレスナーはUFCを離脱。翌12年4月から3年契約で米国最大のプロレス団体である古巣「WWE」に復帰し、WWE世界ヘビー級タイトルを獲得するなど、大黒柱の働きを見せる。ところが、15年に入ってその契約の満了が近づくにつれて、レスナーがWWEとの契約を更新せず、UFCに復帰するのではないか、というウワサが広まった。

 15年2月、レスナーはWWEのビンス・マクマホン会長と口論した末に、テレビ収録の予定もあった大会会場から勝手に出て行ってしまうという事件を起こす。その後ほどなく、レスナーが「UFC 184(ラウジー vs. ジンガノ)」のオクタゴンサイドにいきなり姿を見せたことで、UFC復帰のウワサに拍車がかかった。この時、レスナーは実際にギリギリまでWWEとUFCの両方と契約交渉を行っていたとされる。

 レスナーの去就に大きな注目が集まる中、15年3月24日にESPNの番組に出演したレスナーは、次のような声明を発表した。

「自分の心の中のファイターは、まだ戦い続けることを求めている。ただ、オレはファイターであると同時に、父親でもあり、夫でもある。この歳になると、もう自分一人のことではないんだ。プライドは脇に置いておかないといけない。ここではっきり言っておこう。オクタゴンでの自分の物語は終わった。しかし、プロレスでの物語は、これからも続く」

「ビジネス、カネ、健康、いろいろ考えた。ダナ(ホワイト/UFC会長)ともロレンゾ(フェティータ/UFC会長兼CEO)ともビンス(マクマホン/WWE会長兼CEO)とも話した。女房とも友達とも話し合った。眠れない夜もあった。でも、最後は、自分は生まれながらのエンターテイナーなんだと思うに至った」

 こうしてレスナーはUFC復帰を断念し、以降はWWEでプロレスを続けていくことを公式に明言したのである。

3カ月前にUFC会長に連絡 復帰を申し出た

オーフレイムに敗れた後、1度はUFCを去ったレスナー。しかし再びリングに上がる理由をESPNで語った 【Zuffa LLC】

 それから15カ月が経過し、前言を180度翻す今回のUFC電撃復帰。その理由について、番組に出演したレスナーは次のように語っている。

――なぜ復帰を決めたのか?

レスナー 15カ月前にとても難しい決断を下したのだが、その後ずっと、オレは正しい決断をしたのだろうかとの自問自答が続いていたんだ。毎朝目が覚めるたびに、オレは後悔にとり付かれていた。余生をずっとこんなふうに生きていくのはイヤだと思ったんだ。オレは、何事も恐れることなく、夢を追いかけていくことをモットーにしている。20年後に子どもに、「あの時はこうすべきだった」なんて言いたくないんだ。本物の格闘家はまだオレの中に生きている。以前にUFCで戦っていた頃のオレは、最高の出来とは言えなかった。病気()に打ち勝てると自分にウソをついていた。オレの中では、オレは対戦相手には負けたことはなかったと思っている。病気に負けたんだ。病気こそが最大の敵だった。しかし今のオレは100%健康だ。人生で最高に絶好調なんだよ。

)レスナーは09年から11年にかけて、大腸憩室炎(けいしつえん)による2度の長期欠場を経験している

――UFCから復帰への働きかけがあったのか?

レスナー いや、こちらからデイナ・ホワイトに連絡した。3カ月前のことだ。その後でWWEのボス、ビンス・マクマホンと大人の話し合いをしたのさ。ややこしいことなど何もない。大物ビジネスマンはビッグビジネスを理解するものだよ。

――WWEはUFCからの見返りを求めているのか?

レスナー そんな近視眼的なことにはならない。オレは境界線をまたぐアスリート、現代のボー・ジャクソン()なんだ。UFCとWWEの両方から信用してもらえていることは光栄だが、それもみんなが稼げるビッグビジネスだからこそ可能なことなんだ。オレもプロとして、ボートいっぱいのカネを稼ぐことになる。しかし、オクタゴンの中ではカネだけではやっていけないことも確かだ。

)ボー・ジャクソンはプロ野球(MLB)とアメリカンフットボール(NFL)を長期間兼業し、両スポーツで一流の成績を残したマルチアスリート

――対戦相手にはどうしてマーク・ハントを選んだのか?

レスナー 誰でも構わないんだ。自分から希望を出したわけでないし、これまでにもUFCから提示された相手を断ったこともない。僕はグラップラーで、ハントはストライカー。皆さんが見たがるスタイル対決になる。良い試合になると思うよ。

――UFC復帰は1試合限りのことなのか?

レスナー 現時点では分からない。しかし、この試合の後、WWEの「サマースラム」というビッグイベントが控えていて、オレも出場することは決まっている。オレとしては目の前のことをひとつひとつ、取り組んでいくだけだよ。

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