前走本命が私をシュヴァルグラン 「競馬巴投げ!第125回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

「タッチの差、タッチングスピーチですか?」

[写真5]連覇狙うラブリーデイ、ここ1年勝ち星はないが巻き返しなるか 【写真:乗峯栄一】

 大変、遠回りしたが、今週水曜朝、ぼくは午前3時には目を覚ました。ただFaceBookで、京都宇治に住む競馬友達が「日本名橋20選というのが出ていて、わたしがよく行っている沖縄県宮古島の橋がベスト10に3つも入っていて嬉しい」というコメントを書いていて、う? そりゃ確かに宮古島の橋は美しいかもしれないが、京都宇治に住んでいて「宮古島の橋がいい」はないだろう。「日本歴史上、最も有名な京都・宇治橋が入らなくていいの?」というコメントを入れ、「なぜ、京都・宇治橋が日本史上、そんなに大事かということを地図を入れたりして説明しようか」などとまで言ってしまった。知識の押し売り(知ったかぶり)の最たるものである。

 ゆえに、栗東トレセンに到着するのが、車の入れる朝5時半に5分遅刻してしまったのである。(つまり、今までの話はすべて6月22日水曜、宝塚記念の追い切り日に、なぜわたしが5分遅刻したかの言い訳である)

 しょうがないから、事務所の駐車場に車を停めて、入門ゲートから坂路頂上に向けてひたすら歩く。この時期は朝6時の馬場開場で、有力馬というのは朝イチの追い切りが多いから、何とか間に合わせないといけない。

[写真6]菊花賞&天皇賞馬のキタサンブラック、夏のグランプリでも先行力で他馬を圧倒するか 【写真:乗峯栄一】

 朝から蒸し暑い。広いトラックの外の歩道を回り、坂を登って「ああ、やっと朝イチに間に合った」とハンカチで汗をぬぐっていると、いつも親切なグリーンチャンネル撮影班の人が「今日は坂路追い切りは少ないですよ。ほとんど下(コース)ですね。特に人気馬は」と、いつも通り親切に教えてくれる。涙が出た。

 アンビシャス、カレンミロティック、タッチングスピーチ、ヒットザターゲット(目黒記念、よく3着に来てくれた)の4頭だけ撮って、午前6時半には「じゃ、下に降ります」と決意表明して、またテクテク長い地下通路を歩き、やっと調教スタンド前のコースの出入り口にたどり着く。

 そこでまた汗をぬぐっていると(もうハンカチはグシャグシャだ)、またしても、いつも親切なグリーンチャンネル撮影ディレクター(平場担当)が「え? いま、全部、平場追い切り終わりましたよ、キタサンに、ラブリーに、7頭ぐらいいたかなあ。もう、ほんと、ついさっきまで “入れ食い状態” でしたね。はははは、タッチの差というやつですか? タッチングスピーチですか?」などとつまらないことを言って笑う。

和田竜二のポーズ、誘ってるのかなあ?

[番外写真1]松山弘平くんは新人の頃から変わらずやさしい 【写真:乗峯栄一】

 下見所の端っこに立って、人知れず、涙をぬぐっていると、松山弘平くん[番外写真1]が「あれ? いつも山(坂路)にいるのに、今日は珍しいですねえ」と声を掛けてくれる。ほんと、新人の頃から変わらず優しいんだ、この子は。

「おじちゃんが、この時間になぜ平場にいるかというとね……」と説明し始めると、「すいません、調教があるんで」と行ってしまった。

 またしてもたたずんでいると、先週7勝2着4回と猛爆した和田竜二が、「あれ? 今日は坂路じゃないの?」と声掛けてくれるので、またしても事情を説明し始めたが、ふと思い出し「それにしても、先週すごかったねえ。え? 7勝だった?」と言うと、いい笑顔を見せてくれる。「じゃ7勝記念に1枚。キタサンもラブリーも撮れなかったから、その代わりに」と失礼なことを言って頼んだら、こんなポーズをとってくれた。[番外写真2]

[番外写真2]和田竜二のこのポーズ、誘ってるんだろうか? 【写真:乗峯栄一】

 これは発情期の牝のポーズではないか。誘ってるのかなあ?

 ラブリーデイのルメールの記者会見には間に合った。補充質問で女性タレントのような人が発言すると、そっちを向いて、急にこんな笑顔になった。[番外写真3]

[番外写真3]ルメールは女性タレントのような人から質問を受けてこの笑顔である 【写真:乗峯栄一】

 これはつまり、和田竜二に声掛けたら発情ポーズを見せてくれたのと同じだ。つまり、[ルメール→女性タレント]、[和田竜二→乗峯]は同じ関係にあるといえる。

 あと、ルメール、というより日仏関係に関して大きな発見があった。

 デムーロとルメール、どちらも日本語が上手で、もう通訳は付かないんだけど、ルメールの方は若干日本単語が出るのが遅い。そのときかならず「ーぬn」と「n」が入る。「今回のローテーション、ーぬn」「昨年と比べてーぬn」となる。これがフランス式だ。

 何か挨拶するとき「えー、あー、みなさん」と言うと、これは日本人のおっさんだが「えー、ーぬn、みなさん」と言うと「あ、フランス育ちだ」と言われる。

 どうですか? 大発見でしょう。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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