これからフランスで観戦するあなたへ テレビに映らないEURO スタジアム編

宇都宮徹壱

リヨンのスタジアムには注意が必要

試合後の混雑ぶりは尋常ではない。スタジアムの立地や時間帯によっては、早めに会場を出たほうが無難 【宇都宮徹壱】

 最後に注意を促したいのが、観戦後のことである。行きと同じルートで帰ろうとしたら、地下鉄の入り口が封鎖されていた、なんてことがたまにあるから気をつけたい。私はマルセイユでこのケースに出くわした。スタッド・ベロドロームはロン・ポワン・デュ・プラド駅から近すぎるため、かえって通行渋滞になるという当局の判断があったものと思われる。結局、アイスランドとハンガリーのサポーターとともに、2駅分の距離を歩く羽目になった。試合後の交通規制に関しては、事前にUEFA(欧州サッカー連盟)のサイトなどをチェックしておいたほうがいいだろう。

 今大会のスタジアムは、基本的にアクセスが容易な立地のものが多かったが、リヨンに関しては注意が必要だ。リヨンといえば、1998年のワールドカップで日本がジャマイカと対戦したスタッド・ドゥ・ジェルランを思い出す方がいるかもしれない。しかし今大会で使用されるのは、この1月にオープンしたばかりのスタッド・ドゥ・リヨン。約5万9000人収容のフットボール専用スタジアムで、観戦環境としては申し分ないのだが、いかんせん中心街から約12キロとかなり離れているのが難点である。

 アクセス方法はいくつかある。私の場合はメトロDラインのパラリィ駅まで出て、ここからシャトルバスを利用したのだが、民家がほとんどない道を30分くらい揺られ続けることになる。問題は帰りだ。シャトルバスは長蛇の列ができる上に、勝利に興奮したサポーターのどんちゃん騒ぎに巻き込まれて、えらい目に遭うこと必至である。特に女性だけで観戦する場合は、少し早めに席を立って試合終了のタイミングでシャトルバスに乗ることをお勧めしたい。

 そんな感じで、不満や不安もゼロではなかった今回のユーロ観戦。それでも、先に指摘したカメラの持ち込み禁止や食事のお粗末さを除けば、現地でのスタジアム観戦は非常に満足できるものであった。もちろん、海外での観戦にトラブルはつきものだ。それでも、常に余裕をもって行動すること、そして困ったときには恥ずかしがらずに誰かに助けを求めること。この2点さえ留意していれば、ほとんどの問題は未然に防ぐことができるはずだ。これからフランスに出発される方は、ぜひとも現地でのフットボール観戦を楽しんでいただきたい。ボン・ボヤージュ(よい旅を)!

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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