2016年版トヨタのマシンの特徴は? ル・マン制覇へ、電気系統に大きな変化

田口浩次
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提供:トヨタ自動車

予選を走るTS050 【Getty Images】

 いよいよ「第84回ル・マン24時間レース」のスタートが近づいている。レースのスタートは土曜日の午後3時(日本時間午後10時)だが、その前日である金曜日はサーキットでの走行はなく、各チームはサーキットでのプレスカンファレンスを行い、その後、市内に移動してパレードに参加することが恒例となっている。
 
 ル・マン挑戦18回目となるトヨタにとっては、まさに悲願であり、木曜日までのテストデー、フリー走行、予選と進むにつれて、今年のル・マンは勝利のチャンスも見えている感じがする。そんななか、TOYOTA GAZOO RACINGのスタッフやドライバーに接する機会がもらえたので、その様子などを伝えたい。

今年はキャパシタからバッテリーに

「今年は勝利のチャンスがあるのでは?」と感じるに至った、トヨタのマシンについて簡単に紹介したい。今年のトヨタのマシンTS050は、2つのモーターを前後の駆動に配置し、新開発したターボエンジン、そして8MJ(メガジュール)分の容量を持つバッテリーを組みあせたハイブリッド車両だ。昨年までは、2つのモーターを前後に組み込むところは一緒だが(ただし、モーター自体はまったくの別物)、エンジンは自然吸気のV8エンジン、そして6MJ分の容量を持つキャパシタ(ブレーキ等で回生した熱エネルギーを電気として一時的に貯めておく場所)を組み合わせたハイブリッド車両だった。

 僕らが普段使っている携帯電話や、クルマのエンジンルームにあるバッテリーは、蓄電池とも呼ばれ、その名の通り、電気を貯めることができ、それを放出することで、さまざまな電化製品を作動させることができる。ただし、バッテリーは電気を貯めやすい代わりに、大容量の電気の出し入れを頻繁に行うことを苦手としている。例えば、急速バッテリー充電器などを使った経験がある人や、昔の携帯電話で充電を繰り返すと電池パックが膨張したり熱くなった経験がある人がいるだろう。それは、大きな値の電流が流れたり、電池容量を超える電流が流れることで、発生するトラブルであり、本来電気として貯めるべきエネルギーが熱となって逃げてしまっている。
 
 昨年までトヨタが使用していたキャパシタは、大容量の電気を出し入れすることには優れているのだが、バッテリーのように長時間電気を貯め続けることができない。頻繁に電気を出し入れする場合には向いているので、走行中常に電気の出し入れがあるレース車両には向いていると判断し昨年まで使用していた。

 しかし、今年のマシンTS050はバッテリーを採用。これは、バッテリー容量が昨年までの6MJから8MJに変更・拡大したことが大きいという。より、電気を貯めている時間が必要となり、キャパシタではなくバッテリーへと切り替えた。ちなみにメガジュールとは、1ジュールの100万倍の値で、1ジュールは、1ニュートンメートルと同じ力を動かす値とある。1ニュートンメートルは1キロの物体を1メートル動かす値なので、8MJとなると、単純に言えば、8千トンの物体を1メートル動かせるだけの電力を貯めることができる値ということ。空想科学的な原理で付け加えるならば、身長40メートル、体重3万5000トンの初代ウルトラマンならば、8MJの電気容量をすべてニュートンメートルで使用した場合で約23センチ、重量43万4000トンの初代ガンダムなら1.8センチ動かすことができる。

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